書評
『ガンジー自伝』(中央公論新社)
メジャーな言語だけでも一八を数え、ヒンズー教、イスラム教、シーク教、ジャイナ教、キリスト教、仏教、ゾロアスター教、その他諸々の宗教の坩堝であり、さらにカースト、職業、風土、貧富の差が三重、四重に絡まり合う言語や宗教の多様性にまみれて暮らしながら、書き、考えてきた人々は、おのがうちに強烈な自我と寛容の精神を育むことになる。そもそも、一〇億もの人口を抱える多様性の帝国が、インドという一つの国の体裁を保っていること自体が、奇跡である。大英帝国も支配し切れなかったそのインドを、マハトマ・ガンジーは緩やかにまとめ、独立に導いたのである。政治的な戦略として、非暴力無抵抗主義を発明したガンジーは、南アフリカの弁護士として、政治活動に手を染めることになる。法を唯一の拠りどころに大英帝国に向かって正義を主張する活動はやがて、インド古来の思想を現代化し、ヒンズー教の教えをより普遍化する運動へと発展してゆく。大衆の信仰心と政治運動の巧みな融和を図り、民衆の生活に根ざした説得を通じ、またストライキや断食を非暴力の闘争の手段として用い、大規模な反英運動を展開した。
ガンジーの教えは日本の平和憲法の原理と共鳴する。
【この書評が収録されている書籍】
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