書評
『イマベルへの愛』(早川書房)
チェスター・ハイムズはフランスで発見された黒人作家である。ミズーリの生まれ、十代で犯罪を犯し、刑務所に服役したのを契機に作家となるが、アメリカでは芽が出なかった。フランスに移り住み、かの有名なガリマール社の「セリ・ノワール」のために〈墓掘りジョーンズと棺桶エド・ジョンソン〉シリーズ第一作である本書を書き、華々しい成功を収めたのだ。昔から、フランス人の誉めるアメリカ作品には妙なものが多い。ハーレムを舞台にしたこのシリーズもそうで、アクの強さに慣れるのに訓練を要する。ただし、本書は別。宝石の争奪戦という話は大したことはないが、どうしようもない女を一途に愛する男の純情を描く名作である。
【この書評が収録されている書籍】
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