書評
『閉電路』(早川書房)
もはや翻訳されなくなってしまったが、イァン・フレミングと現代の冒険スパイ小説を結ぶものとして、ウィリアム・ハガードの作品は重要である。代表作の〈チャールズ・ラッセル大佐シリーズ〉は『殺しにはクールな日を』(一九六八)がインドの王国、『火薬樽』(一九六五)が中東の産油国を舞台に政治がらみの諜報活動が描かれているし、本書『閉電路』は南米の架空の共和国の名門一家に、イギリス外務省がからむ政治的陰謀スリラー、つまり、大英帝国の植民地主義と、言い換えてもいいが、そういうものと冒険スパイ小説が表裏一体の関係にあることを、こんなによく教えてくれる作家はいないのである。出来ばえは本書が最高。
「ハガード氏は、スパイ行動に右翼的なロマンティシズムを持ちこんだが、しかし氏の保守主義は通常考えられる保守主義とはニュアンスがちがっている」ジュリアン・シモンズ
【この書評が収録されている書籍】
「ハガード氏は、スパイ行動に右翼的なロマンティシズムを持ちこんだが、しかし氏の保守主義は通常考えられる保守主義とはニュアンスがちがっている」ジュリアン・シモンズ
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