書評
『中国妖怪記者の自伝―20世紀史の証言』(筑摩書房)
二十世紀の中国を振り返るノンフィクションとしてこれほど面白い本は少ない。出版後、香港と台湾で十回も増刷したのもよく頷ける。もし大陸で刊行されたら、ベストセラーになるにちがいない。
一記者の回想録とはいえ、波乱の一生はそのまま近代中国の苦難の歴史でもある。『中央日報』の副編集長として蒋介石にも会える地位にいながら、権力に追随しないために投獄された。その直言癖は毛沢東時代にもたたり、危うく処刑されるところだった。だが、図太い神経と不屈の精神力で、国民党時代、共産党時代を見事にくぐり抜けた。六十歳にして香港に渡り、広い人脈を利用して知名度の高い言論誌の創刊に成功した。
政治的中立が難しい中国で、めずらしく一生中立の立場を貫き通した。だから、物事の見方もずば抜けて冷静で偏らない。反革命粛正、反右派運動や文化大革命についても単に被害者として恨みつらみを並べるのではなく、その背後にある政治構造の欠陥を読み出したのはさすがである。
【この書評が収録されている書籍】
一記者の回想録とはいえ、波乱の一生はそのまま近代中国の苦難の歴史でもある。『中央日報』の副編集長として蒋介石にも会える地位にいながら、権力に追随しないために投獄された。その直言癖は毛沢東時代にもたたり、危うく処刑されるところだった。だが、図太い神経と不屈の精神力で、国民党時代、共産党時代を見事にくぐり抜けた。六十歳にして香港に渡り、広い人脈を利用して知名度の高い言論誌の創刊に成功した。
政治的中立が難しい中国で、めずらしく一生中立の立場を貫き通した。だから、物事の見方もずば抜けて冷静で偏らない。反革命粛正、反右派運動や文化大革命についても単に被害者として恨みつらみを並べるのではなく、その背後にある政治構造の欠陥を読み出したのはさすがである。
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