書評
『作家はどうやって小説を書くのか、じっくり聞いてみよう! (パリ・レヴュー・インタヴュー I)』(岩波書店)
作品からはわからない作家の魅力が見える
作家のことを知ろうと思えば、まずは作品を読まなければなりません。でも、すでに多くの作品を読んでファンになっている作家なら、エッセーやインタビューまでも読みたくなるものです。それで、思いがけない作家の姿や考え方を知ってうろたえたりするのも、本読みにとっては愉(たの)しいことです。この長いタイトルのインタビュー集は、なんといっても登場している作家の顔ぶれが素晴らしい。『パリ・レヴュー』というアメリカの文芸誌に掲載された作家インタビューの中からこれはと思うものを、アメリカ文学の紹介者であり訳者である青山南がピックアップしてまとめたものです。
つまり、訳者の好みが反映したラインアップなのですが、これがとても面白い。いきなりイサク・ディネセンとトルーマン・カポーティが登場します。そしてボルヘス、ジャック・ケルアック、レイモンド・カーヴァーといった物故作家から、現在活躍中のノーベル賞作家までがいろいろな話を聞かせてくれます。
これまでに影響を受けてきた作家や作品、生い立ちや創作の秘訣(ひけつ)にまつわる話は、もちろん興味深いものですが、ふと口にされた言葉にも心動かされます。たとえば、作中ではよく手紙を登場させるカポーティが、「編集者への手紙は頭のなかで書け、ぜったい紙には書くな」と言っていたり、饒舌(じようぜつ)なケルアックが俳句が好きで、自分でも作っていたり、切り詰めた文体を好むカーヴァーが、チェーホフの戯曲とトルストイの『アンナ・カレーニナ』を「スローすぎます」と評していたりするのを知ると、思わず笑みがこぼれます。
作家の姿を浮かび上がらせるためにインタビュアーはどんなやり方をするか、それを知る格好の一冊でもあります。
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