書評

『一汁一菜でよいという提案』(グラフィック社)

  • 2017/11/08
一汁一菜でよいという提案 / 土井 善晴
一汁一菜でよいという提案
  • 著者:土井 善晴
  • 出版社:グラフィック社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(192ページ)
  • 発売日:2016-10-07
  • ISBN-10:4766129547
  • ISBN-13:978-4766129540
内容紹介:
食事はすべてのはじまり。大切なことは、一日一日、自分自身の心の置き場、心地よい場所に帰ってくる暮らしのリズムをつくること。その柱となるのが、一汁一菜という食事のスタイル。合理的な米の扱いと炊き方、具だくさんの味噌汁。

料理本のトレンド 時代に適応、常にヒット作

情報はネットという時代だが、料理レシピ本からは、常にヒットが生まれてくる。

『一汁一菜でよいという提案』(グラフィック社・1620円)は、10万5千部のヒット。具だくさんの味噌(みそ)汁にご飯が基本。料理研究者の土井善晴はシンプルで丁寧な「食べ飽きないもの」を提唱する。

味の濃いレシピが検索上位にランクされる仕組みや蜂蜜を使った離乳食レシピが安全軽視と批判されるなど、大手レシピサイトが見失いつつある部分を受け止めている。

一方、食のシンプル志向は、高齢化時代、「孤食」時代のものでもある。

料理家・小田真規子の『まいにち小鍋』(ダイヤモンド社・1188円)は4万部。これを企画した編集者は「共働きでばらばらに食事をとることが多いという自らの生活」を顧みて着想を得た。

家族生活が多様化する中で、「個食」に「ホッコリ」と「ヘルシー」をもたらす「小鍋」は支持されるはず。その目論見(もくろみ)は当たった。一人暮らしを始めたばかりの独身書店員が本に共感し、店頭でプッシュしてくれたのだ。

料理レシピ本は、流行が激しく変化する分野だ。昨年9月に発表された「料理レシピ本大賞」では、受賞作12点中4点が「つくりおき」系。明確なトレンドが発生する。

傾向の変化と同時に口コミメディアの変化も見てとれる。「キャラ弁」や「彼ごはん」の流行はブログが生んだもの。それが今はインスタだ。

ネットでは、料理名からレシピを検索するのではなく、アップされたできあがりの料理画像から料理を選ぶ。写真を真似(まね)て作り、SNSにアップするのが目的なのだ。

店頭でも「インスタの影響か色が濃くて鮮やかな料理本」が売れゆきがいいと都心の書店の担当者。ネットでのユーザーの動向をレシピ本の仕掛け人たちは見逃さない。

料理レシピ本の書棚からは、社会や家族の変化、ネット時代に適応したマーケティング、流されず伝統へ回帰する思想などさまざまなものが見えてくる。
一汁一菜でよいという提案 / 土井 善晴
一汁一菜でよいという提案
  • 著者:土井 善晴
  • 出版社:グラフィック社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(192ページ)
  • 発売日:2016-10-07
  • ISBN-10:4766129547
  • ISBN-13:978-4766129540
内容紹介:
食事はすべてのはじまり。大切なことは、一日一日、自分自身の心の置き場、心地よい場所に帰ってくる暮らしのリズムをつくること。その柱となるのが、一汁一菜という食事のスタイル。合理的な米の扱いと炊き方、具だくさんの味噌汁。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2017年05月07日

朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。

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