書評
『スタンフォードの自分を変える教室』(大和書房)
「意志力」引き出す訓練法
誰しも自分の決めたことを貫けなかったり、物事を先延ばしにしたりという意志の弱さと闘いながら生きている。自分に厳しい人ほど、それを直そうと本を買うのだろう。書店には、成功者が記す自己啓発書から銀座のナンバーワンホステスの手法まで、ありとあらゆる“やる気本”が並んでいる。だが本書は、これらとは一線を画した手法を提示する。
著者は、米のスタンフォード大学で「意志力の講座」を担当する専門家である。彼女は、心理学や最新の脳科学の知見を披露しながら、人間が潜在力として持つ「意志力」を引き出す訓練法を述べていくのだ。
科学的アプローチによる自己啓発書という切り口が受けて、本書はヒットしている。ただ最新の科学的根拠に基づいた「やる気アップ術」を期待するのであれば、ちょっとご用心!
著者はくわしい根拠を示さず、「ジャンクフード」が「意志力の保有量」なるものを減らし、「信仰やスピリチュアル関係の集まりに参加する」と、それが増えるなどとも述べる。著者が引用する個々の心理学や脳科学の知見は科学的なのだろうが、それらに交じって、ニューエイジと呼ばれる分野めいた主張が顔をのぞかせることもある。
読み物としておもしろいし、人によっては、やる気アップにも効果はあるだろう。ただ、すべてが科学的かどうか疑問が残る。
スタンフォードの権威を書名に冠しているが、本書の内容は公開講座。正規の授業とは別物と考えるべきだ。
日本の書店では、ビジネス書とニューエイジ系の自己啓発書が混同して置かれていることが多いが、本来なら別の棚に置かれるべき性質のものだ。本書はどの棚に置かれるべきだろうか。
朝日新聞 2013年04月07日
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