書評
『クリスチャン・ボルタンスキー―死者のモニュメント』(水声社)
幼いときに使っていた私物の数々から始まり、家族アルバム、殺害死体の写真カード、ランプに囲まれた死者の生前の写真、そして遺品を入れた衣裳(いしょう)缶や無数の古着の陳列と、<死>とその記憶の消失をめぐって、制作を続けてきた美術家ボルタンスキーについての、はじめての評伝であり、解釈である。
消失したものをめぐって「甘い匂(にお)いを焚(た)き込める」コーネルとも、「<加害者>の息子」の位置に立つキーファーとも違ったかたちで、<死>の記憶の消失と向きあってきたボルタンスキーは、「もはや誰も思い出せないことを証拠立てるための逆立ちしたモニュメント」を作りつづけてきたのだと、著者はいう。
ボルタンスキーからすれば、時代のコンテクストを切って物を羅列する博物館にこそ「忘却の匂い」が蔓延(まんえん)しており、彼の作品はむしろ「喪失を共にするように促す」ものだ、と。<死>が見えにくくなった現代を問う力作だ。
消失したものをめぐって「甘い匂(にお)いを焚(た)き込める」コーネルとも、「<加害者>の息子」の位置に立つキーファーとも違ったかたちで、<死>の記憶の消失と向きあってきたボルタンスキーは、「もはや誰も思い出せないことを証拠立てるための逆立ちしたモニュメント」を作りつづけてきたのだと、著者はいう。
ボルタンスキーからすれば、時代のコンテクストを切って物を羅列する博物館にこそ「忘却の匂い」が蔓延(まんえん)しており、彼の作品はむしろ「喪失を共にするように促す」ものだ、と。<死>が見えにくくなった現代を問う力作だ。
朝日新聞 2004年11月14日
朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。
ALL REVIEWSをフォローする

































