書評

『もし京都が東京だったらマップ』(イースト・プレス)

  • 2017/11/29
もし京都が東京だったらマップ / 岸本千佳
もし京都が東京だったらマップ
  • 著者:岸本千佳
  • 出版社:イースト・プレス
  • 装丁:新書(208ページ)
  • 発売日:2016-09-10
  • ISBN:4781680224
内容紹介:
2015年末、京都で不動産業を営む著者が「もし京都が東京だったらマップ」を制作し、個人ブログにアップした。本書では、著者がどういう目線で東京と京都の街を比較したのか、そして調査で体得した街歩きの極意を解説する。

えっ、祇園が浅草!?あの京都がまるで違って見えてくる

今年の初めごろ、ネットで大評判になっている地図を見て、えっ!と意表を突かれたのは、記憶に新しい。そこには、京都の地図に東京の地名が細かくあてがわれていた。

そのごく一部。

丸太町=霞が関 / 河原町−烏丸=渋谷−裏渋谷 / 烏丸御池西=恵比寿 / 岡崎=上野 / 鴨川デルタ=井の頭公園 / 祇園=浅草 / 四条大宮=赤羽 / 紫野=根津

京都叡山電鉄沿線は、なんと意外にもJR中央線沿線にたとえてある。一乗寺は荻窪、茶山は阿佐ヶ谷、元田中は高円寺。そのすぐ西エリアの下鴨は、おおそうきたか、田園調布と書いてあった。

まるで新しい京都の解釈にびっくりする。街を空間化して捉え直し、自在にシャッフルする快感に、ちょっと興奮。

ずっと脳内でもやもやしていた京都全体の姿を、一気に把握できた気にさせられる。“パリのシャンゼリゼは東京の銀座”などという紋切り型の比喩とは一線を画す。京都という土地が、多様性をもつ東京をあてがうことによって細部までバラバラにほぐされ、不思議な二次元の世界が現れている。個人が発想したこのオリジナルな地図の名前は、「もし京都が東京だったらマップ」。本書が書かれる契機になった。

なぜ、あのマップが生まれたのか知りたくて、本書を手に取った。著者は、京都生まれの不動産プランナー。物件の所有者や自治体から相談を受け、周囲の環境から経済まで各状況を踏まえて土地や建物の活用法を提案、橋渡し役を務めるリノベーションのプロと知り、おおいに納得した。土地を俯瞰(ふかん)するだけでなく、このマップは、「他者に正確に伝える」必要があればこその収穫なのだった。さらには、東京と京都に住んだ個人的な事情も、どうやら土地勘に拍車をかけたらしい。

「京都×東京を徹底比較!」の章では、各所の類似点と個性を具体的に解説、街歩きガイドとしても楽しい。京都を語る手段としての東京もまた同時に浮上、二都市の重なりやズレから土地の声がゆらゆらと聞こえてくる。池袋と鴨川はどこにもたとえられなかったという裏話も、両都市の存在価値を表して興味ぶかい。

著者が敬愛する街歩きの師匠、三浦展(あつし)氏との対談も収録。京都は「住む場所」として考えるとわかりやすい、京都がマーケティング都市である理由、京都のエロス性……三浦氏の示唆によって、街が生き物としてふくらんでゆく。

著者は、「京都移住計画」の事業チームに関わっているという。京都に移住したい人々に向けて情報発信や場づくりを行う応援プロジェクトだ。たとえば、その活動を踏まえて発する、こんな言葉。

フリーランスにとって、京都はパラダイス。

京都はとかく洛外に厳しく、よそからやってきた人を疎外しがちだと揶揄(やゆ)されるけれど、職人をはじめ自営業の多い土地だと認識すれば、やみくもな警戒心も解ける。ユニークなマップの背景には、街を使いこなして軽やかに生きようとする生活思想があった。
もし京都が東京だったらマップ / 岸本千佳
もし京都が東京だったらマップ
  • 著者:岸本千佳
  • 出版社:イースト・プレス
  • 装丁:新書(208ページ)
  • 発売日:2016-09-10
  • ISBN:4781680224
内容紹介:
2015年末、京都で不動産業を営む著者が「もし京都が東京だったらマップ」を制作し、個人ブログにアップした。本書では、著者がどういう目線で東京と京都の街を比較したのか、そして調査で体得した街歩きの極意を解説する。

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初出メディア

サンデー毎日

サンデー毎日 2016年10月18日

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