書評
『赤の他人の瓜二つ』(講談社)
【名著 味読・再読】”純文学”の愉しみ
エンターテインメント小説ならたまには読むという人は多い。ところが、純文学作品となると、その時々に話題になった芥川賞受賞作を読む程度で、めったに手を伸ばさないのではないか。著者の小説にしても、芥川賞受賞作(「終の住処」)を読んだことがある人は少なくないだろうが、本書はさらに素晴らしい。純文学は、そもそも脳で「分かろう」とするものではない。小説世界に身を浸し、体で感じるものだ。時間と空間を縦横無尽に飛び越えていく不思議。小説という形式でしか味わえない極上体験。絶対に映画化できない。文字通りの文芸である。「分かる」「説明できる」ことに明け暮れているビジネスパーソンにこそ読んでもらいたい。精神的快感が日々の生活の滋養になる。
ALL REVIEWSをフォローする






































