書評
『都市計画―利権の構図を超えて』(岩波書店)
土地はなぜこんなに高いのか。バブルってつまり何だったのか。日本の都市の景観は、なぜこんなにごちゃごちゃしているのか。先の選挙では「政官財の癒着」ということが声高に言われていたけれど、具体的にはどういうことなのか。金丸さんは、どうしてあんなにお金を持っていたのか(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は1993年)。
日ごろ自分のなかにあった単純にして素朴な疑問たちが、次々と氷解してゆく。正直言って、この本から、こういった疑問への答えを教えられるとは予想していなかった。『都市計画』というタイトルから、もっとスマートな内容を勝手に想像していたのだ。
もちろん、当初私の知りたいと思っていたこと――京都の景観はどうなっちゃうんだろう?リゾートマンションって問題ないのかしら?湯布院町はなぜあんなに感じがいいの?といった疑問にも、本書は見事に答えてくれる。背景にある法律の問題。その説明が、とてもわかりやすい。
それにしても、日本の都市計画というものが、こんなにも建築業界や不動産業界をはじめとする、民間企業のほうばかりを向いたものだったとは。情けないような、腹立たしいような内容がてんこ盛りだ。「都市計画法」「建築基準法」など、素人には難しそうな法律のしくみ(というよりは、からくり?)が、本書では嚙み砕いて書かれている。それだけでも「えーっ」というような事実が明らかになる。さらには、一次から四次までの「全国総合開発計画」の丁寧な読みとりと問題点の指摘。池田勇人首相時代の「所得倍増計画」や田中角栄元首相の「日本列島改造論」などともからめて、日本の歩んできた道のりが振りかえられる。諸外国との比較も興味深い。日本では「住む人のための」都市計画が、いかに遅れているかが浮き彫りにされる。
しかしいっぽうで、変化の兆しもある。最近増えつつある地方自治体の自己防衛策などは、その例だ。また、期待できそうないくつかの点もある。一つは、第四次全国総合開発計画の策定の過程で、当時の細川護煕熊本県知事が、鋭い批判を新聞の論壇へ投稿していること。もう一つは、一九九二年の国会に提出された社会党と社民連による都市計画法の改正案(この時は採決されなかった)が、なかなかのすぐれものだったこと。
本書が書かれた時点では、総選挙の結果は出ていなかった。新しい政権のもとで、ここに示されたような都市計画の問題は、どう対処されてゆくのだろうか。
【この書評が収録されている書籍】
日ごろ自分のなかにあった単純にして素朴な疑問たちが、次々と氷解してゆく。正直言って、この本から、こういった疑問への答えを教えられるとは予想していなかった。『都市計画』というタイトルから、もっとスマートな内容を勝手に想像していたのだ。
もちろん、当初私の知りたいと思っていたこと――京都の景観はどうなっちゃうんだろう?リゾートマンションって問題ないのかしら?湯布院町はなぜあんなに感じがいいの?といった疑問にも、本書は見事に答えてくれる。背景にある法律の問題。その説明が、とてもわかりやすい。
それにしても、日本の都市計画というものが、こんなにも建築業界や不動産業界をはじめとする、民間企業のほうばかりを向いたものだったとは。情けないような、腹立たしいような内容がてんこ盛りだ。「都市計画法」「建築基準法」など、素人には難しそうな法律のしくみ(というよりは、からくり?)が、本書では嚙み砕いて書かれている。それだけでも「えーっ」というような事実が明らかになる。さらには、一次から四次までの「全国総合開発計画」の丁寧な読みとりと問題点の指摘。池田勇人首相時代の「所得倍増計画」や田中角栄元首相の「日本列島改造論」などともからめて、日本の歩んできた道のりが振りかえられる。諸外国との比較も興味深い。日本では「住む人のための」都市計画が、いかに遅れているかが浮き彫りにされる。
しかしいっぽうで、変化の兆しもある。最近増えつつある地方自治体の自己防衛策などは、その例だ。また、期待できそうないくつかの点もある。一つは、第四次全国総合開発計画の策定の過程で、当時の細川護煕熊本県知事が、鋭い批判を新聞の論壇へ投稿していること。もう一つは、一九九二年の国会に提出された社会党と社民連による都市計画法の改正案(この時は採決されなかった)が、なかなかのすぐれものだったこと。
本書が書かれた時点では、総選挙の結果は出ていなかった。新しい政権のもとで、ここに示されたような都市計画の問題は、どう対処されてゆくのだろうか。
【この書評が収録されている書籍】
朝日新聞 1993年10月03日
朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。
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