自著解説
『三十過ぎたら楽しくなった!』(講談社)
三十過ぎたら楽しくなった
三十代最後の年は、出版点数がいつになく多かった。別に執筆ペースが上がったわけではなく、前々から書きためていた原稿をまとめる時期が、たまたま重なったためだ(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は2000年10月)。本にするにあたっては、何らかのメッセージ性のあるものにしたいと、まとめにプラス、それらを書いたとき心にあったことを、書き下ろし原稿として、つけ加えるのが常である。
このところの私のテーマの中心には、やはり、三十代から四十代への移行ということがあったので、「三十代を振り返って」とか「四十代を迎えるにあたって」といった原稿を、半年間集中的に書いたため、三十九歳にして気分は早くも四十歳だ。アンケートや、店で会員力ードを作るときなど、年齢欄に間違って「四十」と記入したりした。このぶんだと四十の大台へは、ゆうゆうとソフトランディングできそうだ。
顧みれば、二十代から三十代になるときは、スムーズだったとはとても言い難い。
「三十がどうした、私は私だ」
と自分に言い聞かせていたが、内心は違った。結婚とか仕事とかに、三十になるまではまあ、何らかの答が出ているだろうと思っていたのに、まるで未解決のまま。
「このままではいかん」
と貯金をはたいてまとめ払いで保険に入ったり、その一方、
「誰かいい人いないでしょうか」
と知人に相談を持ちかけたりと、かなりのダッチロール現象を起こしていた。
けれども、いざ三十代に入ってみれば、そんなにはっきり二十代と一線を画するものではなく、まわりの人も、
「いつまで仕事を続けられるんだろう」
「このままひとりでいいのか」など、
相変わらず同じようなことで悩んでいた。ある齢になったからといって、人生の諸問題に、突然ケリがつくものでもないらしい。
そう思ったら、すごく気が楽になった。
すると、自分の視界を狭くしていたものが急にとり払われたように、まわりのいろいろなことに対し好奇心がわいてきた。通販、足もみエステ、占い、インターネット……。
それらに遅ればせながらトライした報告が、拙著『三十過ぎたら楽しくなった!』(講談社文庫)である。『三十女のおいしい暮らし』(講談社)を改題の上、加筆した。
三十代のときどきの思いを綴った、書き下ろし原稿もおさめ、それでなんとか三十代にケリがつけられそうな感じである。
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