書評
『童貞放浪記』(幻冬舎)
人間を知る、自分を知る
私小説集。表題作もいいが「黒髪の匂う女」がとくにイイ。名誉名声と美女がスキ。小学生のように強欲で自己中心的。底抜けの楽観と驚くべき悲観の呉越同舟。ねたみ・そねみ・つらみ・うらみ・ひがみのオンパレード。書いてあることは基本的にその5つだけ。人間の愚と醜の全面露出だ。初めて読む人は心の底からへきえきするだろう。僕もそうだった。が、何事も我慢が大切。そのうちに人間の「強い弱さ」の迫力が分かってくる。泥沼から普遍的な人間の本質がどろりどろどろと浮かび上がる。
程度の差こそあれ、人間なんてこんなもの。人間を知る。そして、自分を知る。日頃の仕事で表面的な「強さ」「正しさ」ばかり求められている大人にお薦めする。