退屈な読書
- 著者:高橋 源一郎
- 出版社:朝日新聞社
- 装丁:単行本(253ページ)
- 発売日:1999-03-00
- ISBN-13:978-4022573759
- 内容紹介:
- 死んでもいい、本のためなら…。すべての本好きに贈る世界でいちばん過激な読書録。
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私が子供のころの、東京の下町に住む人々にとっては、その居住区域が一つの〔国〕といってもよかったほどで、たとえば浅草なら浅草、下谷や入谷に住んでいれば、そこで、ささやかながらも生活のすべてが過不足なくととのえられていったのである。仕事をもつ男たちは、他の土地へも町へも出て行ったろうが、女や子供たちは、ほとんど一年中を自分が住む町ですごした。そこには、かならず、小さいながらも映画館があり、寄席があり、洋食屋も支那飯屋も、蕎麦屋も鮨屋もあって、目と耳と口をたのしませる手段に、『事を欠かなかった……』ものなのだ。(『散歩のとき何か食べたくなって』新潮文庫、「横浜あちらこちら」)