書評

『秘蔵古写真 幕末』(山川出版社)

  • 2019/07/18
秘蔵古写真 幕末 /
秘蔵古写真 幕末
  • 監修:日本カメラ博物館
  • 出版社:山川出版社
  • 装丁:単行本(255ページ)
  • 発売日:2019-04-21
  • ISBN-10:4634151472
  • ISBN-13:978-4634151475
内容紹介:
日本カメラ博物館所蔵の、勝海舟の遣米使節団一行の写真やベアト/下岡蓮杖/上野彦馬らの初書籍化を含む貴重な古写真を掲載。

自分に対してだけでなく時代への責任感があった

本書は日本カメラ博物館が収集した幕末の古写真を集めたものである。まずは「黒船来航と日本人漂流民」。有名なペリーらとともに「利七」の肖像がある。1850年、江戸を出航したジャンク船・栄力丸は嵐に遭って漂流、アメリカの船に救出されサンフランシスコにたどり着いた。利七は乗組員の一人で、翌年に同地で彼を撮影したものこそが、日本人が被写体となった史上初めての写真である。

ついで、「海を渡った侍たち」。咸臨丸の遣米使節団、徳川慶喜の弟・昭武を奉じた遣欧使節団、近代日本の行く末を定めた岩倉使節団が写っている。遣米使節団の中にはミスター1万円、福沢諭吉の若き日の姿があり、遣欧使節団の中には新ミスター、渋沢栄一がいる。また長州が送った留学生(伊藤博文や井上馨ら、いわゆる長州ファイブ)、薩摩の留学生(五代友厚や森有礼)も見ることができる。

ここにいる侍たちは、幕府方も新政府方も、みないい顔をしている。イケメンとかではなく(勝海舟や桂小五郎は十分にハンサムだが)、目が力を持ち、引き締まった表情をしている。リンカーンは「男は40歳になったら、自分の顔に責任を持たねばならない」と言ったというが、侍たちは誰も自分に対してだけではなく、時代に対して責任感を持っていた。だからこそ力強いのだろう。

第3章が「外国人の見た日本人」。ここには幕末・日本の庶民の素顔がある。ぼくたちのひいひいじいちゃん、ばあちゃんたちだろうか。同じ日本人だから当たり前かもしれないが、みな現代に連れてくれば家電やPCを操って、違和感なく生活を始めるんじゃないか。いつでも庶民はしぶといのだ。そして最後に「写真が綴(つづ)った幕末史」という構成になっている。
秘蔵古写真 幕末 /
秘蔵古写真 幕末
  • 監修:日本カメラ博物館
  • 出版社:山川出版社
  • 装丁:単行本(255ページ)
  • 発売日:2019-04-21
  • ISBN-10:4634151472
  • ISBN-13:978-4634151475
内容紹介:
日本カメラ博物館所蔵の、勝海舟の遣米使節団一行の写真やベアト/下岡蓮杖/上野彦馬らの初書籍化を含む貴重な古写真を掲載。

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初出メディア

サンデー毎日

サンデー毎日 2019年7月7日増大号

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