映画は語る――後記に代えて
これは私の二冊目の映画インタビュー集です。一冊目の映画インタビュー集は「映画とは何か」(一九八八年、草思社刊)という大げさな標題になってしまったのですが、私としては単純に、ずばり、映画インタビューとは映画について語るのではない、映画が語るのだ、と言いたかったのです。今回もそのつづき、延長として「映画はこうしてつくられる」という題名にしました。「生きた映画史」の証言でもあるからです。そもそもの発想は、映画ファンとして、映画にできるだけ近づきたい、できたら映画のなかに入りこみたいと思い、チャンスに恵まれるごとに映画人にインタビューを試みてきました。うまくいったこともあれば、うまくいかなかったこともある。というよりも、幸福なインタビューもあれば、不幸なインタビューもある――幸福な映画もあれば不幸な映画もあるように。しかし、すべてが映画そのものであることだけはたしかです。
一九六四年末から六七年半ばまでパリに滞在していたときのインタビューから、その後も取材などで何度か渡仏したときのインタビュー、そして来日した映画人のインタビューに至るまで、いろいろ、ほぼインタビューをした順番にまとめましたが、新聞や雑誌などに発表当時は当然、原稿の締め切りがあり、掲載枚数の制限もあって、「一部初出」がほとんどで(初出紙誌は単行本に採録した場合もふくめて、各インタビューの末尾に記しました)、今回、本書に収録するにあたって、残っていた録音テープを聴き直してあらたに採録もして、大幅に補充しました。
私にとっては、何冊かの映画評論集よりも重要な、心のこもった集成になります。
[書き手] 山田宏一(やまだ・こういち)
映画評論家。1938年、ジャカルタ生まれ。東京外国語大学フランス語科卒業。1964~1967年、パリ在住。その間「カイエ・デュ・シネマ」誌同人。1987年、フランスより芸術文化勲章シュバリエ受勲。1991年、第1回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞(『トリュフォー、ある映画的人生』に対して)。2007年、第5回文化庁映画賞(映画功労表彰部門)受賞。2017年、第35回川喜多賞受賞