闘牛の島
- 著者:小林 照幸
- 出版社:新潮社
- 装丁:単行本(254ページ)
- ISBN-10:4104137022
- ISBN-13:978-4104137022
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蹴りたてていた前足を揃え、頭を低くして左角を押し当てる体勢で赤鬼は突進してきた。ガツン、ゴチン。角と角がぶつかる鈍く、重い音が客席の前方には聞こえた。
赤鬼はさらに一歩前に出る。坊(実熊)は頭を低くしてこらえるが、赤鬼の右角の先が坊の額に食いこみ、鮮血が見えた。早くも流血。
赤鬼の突きはそれから五分以上続いた。まだ坊は攻撃しない。鮮血に染まりながらも、まだ立っている。強固な精神力だけで立ち尽しているような趣を醸し出し、赤鬼は震え、ついに攻撃をやめた。
赤鬼と比べれば短い角だが、坊の角は赤鬼の額にめり込んでいる。血が頬を伝わってしたたり落ちた。経験したことのない痛みに赤鬼は思わずアウガンした。