書評
『怪獣文学大全』(河出書房新社)
ダメじゃん。これじゃあイグアナじゃん。バカじゃん? ハリウッド版『GODZILLA』を観て、つくづくしみじみ此方(こなた)と彼方(かなた)の怪獣に対するイメージの違いにガッカリさせられた、というか「すわ、日米開戦?」とまで憎しみをたぎらせたのは、決してわたくしひとりではござりますまい。そんな怪獣同盟の同志諸君に贈りたいのが本書なんである。
カニバリズム小説の傑作『ひかりごけ』の作者・武田泰淳がSF作家時代の筒井康隆もかくやとばかりのスラップスティックぶりを発揮しているゴジラ小説を筆頭に、中村真一郎・福永武彦・堀田善衛連作によるモスラ小説、日本SFの確立に尽力した福島正実の『マタンゴ』、その原型たるホジスンの『闇の声』、橋本治による『マタンゴ』への爆笑オマージュ小説、そして戦後文学の論客・花田清輝のSF評論等々、年代もジャンルもバラエティに富んだ全一三作品に感動を覚えないような輩(やから)は、怪獣同盟の同志なんかじゃない! そう断言したくなるほど秀逸な怪獣文学のアンソロジーになっているのだ。ゴジラと何の関わりもないイグアナの化け物を退治して快哉(かいさい)を上げているハリウッドのバカ者どもには決して理解できない怪獣、その魅力! 外部からの脅威としての怪獣、内なる邪悪な暴力の隠喩としての怪獣、異形の者への畏怖の供物(くもつ)である怪獣。このアンソロジーに収められた怪獣観の軽やかさと深みといったらどうだ。日本が四〇年も前に生み出した怪獣文化に対する懐かしさと誇らしさで胸がいっぱいになる一冊なんである。
【この書評が収録されている書籍】
カニバリズム小説の傑作『ひかりごけ』の作者・武田泰淳がSF作家時代の筒井康隆もかくやとばかりのスラップスティックぶりを発揮しているゴジラ小説を筆頭に、中村真一郎・福永武彦・堀田善衛連作によるモスラ小説、日本SFの確立に尽力した福島正実の『マタンゴ』、その原型たるホジスンの『闇の声』、橋本治による『マタンゴ』への爆笑オマージュ小説、そして戦後文学の論客・花田清輝のSF評論等々、年代もジャンルもバラエティに富んだ全一三作品に感動を覚えないような輩(やから)は、怪獣同盟の同志なんかじゃない! そう断言したくなるほど秀逸な怪獣文学のアンソロジーになっているのだ。ゴジラと何の関わりもないイグアナの化け物を退治して快哉(かいさい)を上げているハリウッドのバカ者どもには決して理解できない怪獣、その魅力! 外部からの脅威としての怪獣、内なる邪悪な暴力の隠喩としての怪獣、異形の者への畏怖の供物(くもつ)である怪獣。このアンソロジーに収められた怪獣観の軽やかさと深みといったらどうだ。日本が四〇年も前に生み出した怪獣文化に対する懐かしさと誇らしさで胸がいっぱいになる一冊なんである。
【この書評が収録されている書籍】
初出メディア

feature(終刊) 1998年12月号
ALL REVIEWSをフォローする





































