書評

『怪獣文学大全』(河出書房新社)

  • 2020/02/03
怪獣文学大全 /
怪獣文学大全
  • 編集:東 雅夫
  • 出版社:河出書房新社
  • 装丁:文庫(357ページ)
  • ISBN-10:4309405452
  • ISBN-13:978-4309405452
内容紹介:
大人から子供まで、多くの人々を熱狂させる未知の生物!!純文学の世界をはじめ、スラップスティック・コメディ、批評エッセイなど、あらゆる分野に登場するとびきりの『怪獣』たちを集大成した、空前絶後の大アンソロジー。寓話、メルヘン、SF、ホラー…破壊の恐怖をひき起こしながらも、どこか懐かしく、愛らしい異形の者たち。
ダメじゃん。これじゃあイグアナじゃん。バカじゃん? ハリウッド版『GODZILLA』を観て、つくづくしみじみ此方(こなた)と彼方(かなた)の怪獣に対するイメージの違いにガッカリさせられた、というか「すわ、日米開戦?」とまで憎しみをたぎらせたのは、決してわたくしひとりではござりますまい。そんな怪獣同盟の同志諸君に贈りたいのが本書なんである。

カニバリズム小説の傑作『ひかりごけ』の作者・武田泰淳がSF作家時代の筒井康隆もかくやとばかりのスラップスティックぶりを発揮しているゴジラ小説を筆頭に、中村真一郎・福永武彦・堀田善衛連作によるモスラ小説、日本SFの確立に尽力した福島正実の『マタンゴ』、その原型たるホジスンの『闇の声』、橋本治による『マタンゴ』への爆笑オマージュ小説、そして戦後文学の論客・花田清輝のSF評論等々、年代もジャンルもバラエティに富んだ全一三作品に感動を覚えないような輩(やから)は、怪獣同盟の同志なんかじゃない! そう断言したくなるほど秀逸な怪獣文学のアンソロジーになっているのだ。ゴジラと何の関わりもないイグアナの化け物を退治して快哉(かいさい)を上げているハリウッドのバカ者どもには決して理解できない怪獣、その魅力! 外部からの脅威としての怪獣、内なる邪悪な暴力の隠喩としての怪獣、異形の者への畏怖の供物(くもつ)である怪獣。このアンソロジーに収められた怪獣観の軽やかさと深みといったらどうだ。日本が四〇年も前に生み出した怪獣文化に対する懐かしさと誇らしさで胸がいっぱいになる一冊なんである。

【この書評が収録されている書籍】
そんなに読んで、どうするの? --縦横無尽のブックガイド / 豊崎 由美
そんなに読んで、どうするの? --縦横無尽のブックガイド
  • 著者:豊崎 由美
  • 出版社:アスペクト
  • 装丁:単行本(560ページ)
  • 発売日:2005-11-29
  • ISBN-10:4757211961
  • ISBN-13:978-4757211964
内容紹介:
闘う書評家&小説のメキキスト、トヨザキ社長、初の書評集!
純文学からエンタメ、前衛、ミステリ、SF、ファンタジーなどなど、1冊まるごと小説愛。怒濤の239作品! 560ページ!!
★某大作家先生が激怒した伝説の辛口書評を特別袋綴じ掲載 !!★

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

怪獣文学大全 /
怪獣文学大全
  • 編集:東 雅夫
  • 出版社:河出書房新社
  • 装丁:文庫(357ページ)
  • ISBN-10:4309405452
  • ISBN-13:978-4309405452
内容紹介:
大人から子供まで、多くの人々を熱狂させる未知の生物!!純文学の世界をはじめ、スラップスティック・コメディ、批評エッセイなど、あらゆる分野に登場するとびきりの『怪獣』たちを集大成した、空前絶後の大アンソロジー。寓話、メルヘン、SF、ホラー…破壊の恐怖をひき起こしながらも、どこか懐かしく、愛らしい異形の者たち。

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初出メディア

feature(終刊)

feature(終刊) 1998年12月号

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