書評
『警察対テロ部隊テクニック―人質交渉から強行突入まで』(並木書房)
こんな時代には・・・
なにしろ剣呑な時代になった。そもそも人情もなにも通じない、理解不能の犯罪者がいくらも現れて、どう考えても理不尽な理由によって、あっさりと人を傷つけたり殺したりする。あの、バスを乗っ取って包丁で人質を刺し殺した十七歳の少年犯など、その良い例である。そうかと思うと、外国から冷血な殺し屋などがどんどん入ってきて、金のためにあっさりと一家皆殺しにしたりもする(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は2004年)。
一方で、テロは今や世界を覆う情勢で、いつなんどき自爆テロなどが出没しないとも限らない。東京のど真ん中だって決して安全とは言えないのである。
そこで、テロ犯罪などに対する対処・防衛の専門家である毛利元貞氏の近著『警察対テロ部隊テクニック』を一読してみた。すると、なんとまあ知らぬことばかりである。各国の警察や軍の特殊部隊が、どのような装備・戦術をもちいて、かかる犯罪に対峙しているかということを、具体的に詳しく教えてくれているのがこの本である。安易に犯人の脅迫に屈してもいけないが、いきなり強行突入もよくない。まずは犯人の心理をよく読み、これと交渉して安全に人質を救出することだ。それは単に人情に訴えればいいというものではなく、専門官による綿密な心理学的分析と対応が必要になる。
だからまずはその専門官を養成するのが焦眉の急なのだ。
安易に対応すれば無辜の人命が失われかねない。と言ってただ闇雲に犯人の人権ばかり慮るのも愚策というべきである。私はこの本を読みながら、こういう時代には、こうした犯罪とそれに立ち向かう人々の苦悩と現実を知るために、みんながこんな本を一読することがぜひ必要ではないかと思った。
初出メディア

スミセイベストブック 2004年3月号
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