書評

『ナニワ金融道カネと非情の法律講座』(講談社)

  • 2017/07/09
ナニワ金融道カネと非情の法律講座 / 青木雄二
ナニワ金融道カネと非情の法律講座
  • 著者:青木雄二
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(207ページ)
  • ISBN-10:4062065177
  • ISBN-13:978-4062065177
内容紹介:
第1部 マトモな常識ではわからないカネと法の世界
第2部 取立てはこうして行われる
第3部 債務者起死回生の逆襲
第4部 紙切れ一枚が天国と地獄の分かれ道
第5部 落とし所は決まっている
『週刊モーニング』に連載中のマンガ「ナニワ金融道」をベースにした、金銭トラブルをめぐる法律講座だ。と言っても、ありきたりの法律解釈ではない。ヤクザ絡みの紛争の実態や抜け道、奥の手をバッチリ解説する、裏街道の指南書である。

全部で十四話。原作のマンガは挿絵がわりで、意外に読みごたえのある本文だ。サラ金の「書換え」、「まわし」の手口。強制執行や競売のウラおもて。いいことずくめの自己破産。白紙委任状や念書の落とし穴。裁判所の裏をかく「合法」的妨害手段のかずかず。どれも、関係「ギョーカイ」の人々の「ジョーシキ」であり、彼らが公然とは口にしない真実である。

となれば、そんな内情に接する機会の少ないサラリーマンが、喜んで本書を手にするのも当然だろう。これはもう、立派な教養書である。

加えて本書は、日本の法文化の一級資料だと私は思う。このまま翻訳しても、日本を理解するのにうってつけの書物として注目を集めそうだ。

本書は金融トラブルの実例を、面白おかしく追いかけているだけではない。そのリアリズムの根底に、傾聴すべき批判がある。

《端的にいえば法律そのものが債権者に圧倒的に不利にできている》、《問題は手続法(裁判法と強制執行法)だ》、《債権者が裁判に訴えるまで持ちこたえられれば、これはもう勝ったも同然なのである》(エピローグ)

まるでブラックユーモアだが、これが実態だ。裁判に勝っても債権取り立ての役に立たない。司法が無力な分だけ、ヤクザの出番が増える。こうした病根に人々の目を向けさせる、得難い書物ではある。

ひとつだけ文句を言えば、著者はだれなのか? 青木雄二「監修」とあるからには、本文を書いたライターがいるのだろう。手抜かりのない仕上がりだけに、著者として名前を掲げてあるとなおよかった。

【この書評が収録されている書籍】
書評のおしごと―Book Reviews 1983‐2003 / 橋爪 大三郎
書評のおしごと―Book Reviews 1983‐2003
  • 著者:橋爪 大三郎
  • 出版社:海鳥社
  • 装丁:単行本(382ページ)
  • ISBN-10:4874155421
  • ISBN-13:978-4874155424
内容紹介:
1980年代、現代思想ブームの渦中に登場以来、国内外の動向・思潮を客観的に見据えた著作と発言で論壇をリードしてきた橋爪大三郎が、20年間にわたり執筆した書評を初めて集成。明快な思考で知られる著者による、書評の最良の教科書。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

ナニワ金融道カネと非情の法律講座 / 青木雄二
ナニワ金融道カネと非情の法律講座
  • 著者:青木雄二
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(207ページ)
  • ISBN-10:4062065177
  • ISBN-13:978-4062065177
内容紹介:
第1部 マトモな常識ではわからないカネと法の世界
第2部 取立てはこうして行われる
第3部 債務者起死回生の逆襲
第4部 紙切れ一枚が天国と地獄の分かれ道
第5部 落とし所は決まっている

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朝日新聞

朝日新聞 1994年9月25日

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