書評
『あたしたち、海へ』(新潮社)
新型コロナウイルスの影響で、息苦しい毎日が続く。外出自粛の閉鎖的な環境のなか、家庭で、地域で、鬱屈や不安からくる暴力や暴言、虐待などが増えているという。『あたしたち、海へ』は女子中学校内におけるいじめを題材としている。その中核にある行動原理は、閉ざされた共同体の同調圧力と排他意識である。
同じ学園に通う「瑤子」「有夢」「海」は同じ新興住宅地に住み、小学校のころからの幼なじみだ。ところが、海だけがべつの町の公立校へ転校することになる。原因は、ダンス部のボス女子率いるグループによるいじめ。正義感が強く、空気を読む、忖度(そんたく)するということをしない海は、自分と異質なものを恐れる同質集団にとっては、脅威となる存在だ。転校後も、三人に対して陰湿ないじめが執拗に続行する。
いじめる側も常にびくびくと人の顔色を窺(うかが)い、無理に笑っている。
追いつめられた瑤子と有夢は、いつしか死に魅入られていく……。
今にもこわれそうな心を抱えておとなの前で明るくふるまう少女たちの孤独が痛ましい。彼女たちの苦しみを相対化するある老婦人の生き方が、ひとつの救いとなるだろう。
同じ学園に通う「瑤子」「有夢」「海」は同じ新興住宅地に住み、小学校のころからの幼なじみだ。ところが、海だけがべつの町の公立校へ転校することになる。原因は、ダンス部のボス女子率いるグループによるいじめ。正義感が強く、空気を読む、忖度(そんたく)するということをしない海は、自分と異質なものを恐れる同質集団にとっては、脅威となる存在だ。転校後も、三人に対して陰湿ないじめが執拗に続行する。
いじめる側も常にびくびくと人の顔色を窺(うかが)い、無理に笑っている。
追いつめられた瑤子と有夢は、いつしか死に魅入られていく……。
今にもこわれそうな心を抱えておとなの前で明るくふるまう少女たちの孤独が痛ましい。彼女たちの苦しみを相対化するある老婦人の生き方が、ひとつの救いとなるだろう。