書評

『ヨットクラブ』(晶文社)

  • 2020/08/11
ヨットクラブ / デイヴィッド イーリイ
ヨットクラブ
  • 著者:デイヴィッド イーリイ
  • 翻訳:白須 清美
  • 出版社:晶文社
  • 装丁:単行本(326ページ)
  • 発売日:2003-10-01
  • ISBN-10:479492738X
  • ISBN-13:978-4794927385
内容紹介:
実業界で成功し、すべてを手に入れたジョン・ゴーフォースにも、ひとつだけ叶わぬ望みがあった。それは市の有力者が集まる秘密めいた社交クラブの会員になること。だが、待望の入会の誘いを受けたとき、彼はすでに人生に倦怠を覚え始めていた…。富豪たちのひそかな愉しみを描いて、MWA最優秀短篇賞に… もっと読む
実業界で成功し、すべてを手に入れたジョン・ゴーフォースにも、ひとつだけ叶わぬ望みがあった。それは市の有力者が集まる秘密めいた社交クラブの会員になること。だが、待望の入会の誘いを受けたとき、彼はすでに人生に倦怠を覚え始めていた…。富豪たちのひそかな愉しみを描いて、MWA最優秀短篇賞に輝いた名作「ヨットクラブ」、規律正しい教育を理想に掲げる寄宿制学校のおぞましい実態が明らかにされる「理想の学校」、何か月も一言も口をきかず、互いに無視しあってきた夫婦が繰り広げる奇妙なゲームの顛末「夜の客」、自分が神であることに気づいた男が始めた通信事業「G.O'D.の栄光」など、奇抜なシチュエーション、たがのはずれた世界を、ブラックユーモアをまじえて描き、読者に強烈なショックと恐怖をもたらす異色作家イーリイの傑作、全15篇を収録。
CSのミステリチャンネルという局の番組「ベストブックス」に出演しているのですが(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は2004年)、そこで二〇〇三年海外編の第一位に輝いたのがデイヴィッド・イーリイの短篇集『ヨットクラブ』。ミステリー、SF、怪奇、幻想と、多彩にして不思議な読み心地が十五篇も楽しめる逸品なのです。人生に倦(う)んでしまったVIPな男たちのひそやかにして罪深い愉しみを描いて不気味な表題作。互いの存在を無視し続けている家庭内別居夫妻の始めた意地悪なゲームが、ついに超自然的な恐怖を呼び込んでしまう「夜の客」。善意がどれほど怖ろしい抑圧になりうるかを描いて気味が悪い「隣人たち」などなど。

なかでも素晴らしい一篇が「タイムアウト」です。主人公はイギリスに憧れているガル教授。研究休暇をロンドンで過ごす手筈を整えたのだが、出立当日に北極で原子力事故が起こり、全世界的に貿易と旅行が凍結されてしまいます。が、それから二年後、ガル教授はアメリカ政府が派遣するイギリスの人文科学的調査メンバーに選ばれ、念願の渡英を果たすのです。ところが原子力事故が起こったのは、実はイギリス。全世界に内緒のまま、イギリスを以前どおりに復興させる。過去ばかりか、復興工事が行われている期間の歴史をも創造する。それがガル教授らに課せられた使命だったのです。

ところが、イギリスと歴史学を愛するガル教授には納得できない。そんなインチキな代物には意味がないっ! かくして、計画を失敗させようと意気込むのだが――。わずか六五ぺージの物語の中に、歴史とは何かという大きなテーマがわかりやすい形で込められている、その巧みな語り口には舌を巻くばかりです。日本ではあまり知られていない作家ですが、この機会にお見知りおきを!

【文庫版】
タイムアウト / デイヴィッド・イーリイ
タイムアウト
  • 著者:デイヴィッド・イーリイ
  • 翻訳:白須 清美
  • 出版社:河出書房新社
  • 装丁:文庫(397ページ)
  • 発売日:2010-01-06
  • ISBN-10:4309463290
  • ISBN-13:978-4309463292
内容紹介:
異色作家イーリイがブラックユーモアに満ちた筆致で日常の裏側を描き出す、奇想と幻想の名短篇集。さえない老教授が巻き込まれた驚天動地の機密計画とは…傑作「タイムアウト」をはじめ、MWA賞受賞作「ヨットクラブ」、自分は神だと信じる男「G.O'D.の栄光」他、全15篇。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

ヨットクラブ / デイヴィッド イーリイ
ヨットクラブ
  • 著者:デイヴィッド イーリイ
  • 翻訳:白須 清美
  • 出版社:晶文社
  • 装丁:単行本(326ページ)
  • 発売日:2003-10-01
  • ISBN-10:479492738X
  • ISBN-13:978-4794927385
内容紹介:
実業界で成功し、すべてを手に入れたジョン・ゴーフォースにも、ひとつだけ叶わぬ望みがあった。それは市の有力者が集まる秘密めいた社交クラブの会員になること。だが、待望の入会の誘いを受けたとき、彼はすでに人生に倦怠を覚え始めていた…。富豪たちのひそかな愉しみを描いて、MWA最優秀短篇賞に… もっと読む
実業界で成功し、すべてを手に入れたジョン・ゴーフォースにも、ひとつだけ叶わぬ望みがあった。それは市の有力者が集まる秘密めいた社交クラブの会員になること。だが、待望の入会の誘いを受けたとき、彼はすでに人生に倦怠を覚え始めていた…。富豪たちのひそかな愉しみを描いて、MWA最優秀短篇賞に輝いた名作「ヨットクラブ」、規律正しい教育を理想に掲げる寄宿制学校のおぞましい実態が明らかにされる「理想の学校」、何か月も一言も口をきかず、互いに無視しあってきた夫婦が繰り広げる奇妙なゲームの顛末「夜の客」、自分が神であることに気づいた男が始めた通信事業「G.O'D.の栄光」など、奇抜なシチュエーション、たがのはずれた世界を、ブラックユーモアをまじえて描き、読者に強烈なショックと恐怖をもたらす異色作家イーリイの傑作、全15篇を収録。

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婦人公論

婦人公論 2004年1月22日号

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