解説

『オリガ・モリソヴナの反語法』(集英社)

  • 2022/02/04
オリガ・モリソヴナの反語法  / 米原 万里
オリガ・モリソヴナの反語法
  • 著者:米原 万里
  • 出版社:集英社
  • 装丁:文庫(531ページ)
  • 発売日:2005-10-20
  • ISBN-10:4087478750
  • ISBN-13:978-4087478754
内容紹介:
1960年、チェコのプラハ・ソビエト学校に入った志摩は、舞踊教師オリガ・モリソヴナに魅了された。老女だが踊りは天才的。彼女が濁声で「美の極致!」と叫んだら、それは強烈な罵倒。だが、その… もっと読む
1960年、チェコのプラハ・ソビエト学校に入った志摩は、舞踊教師オリガ・モリソヴナに魅了された。老女だが踊りは天才的。彼女が濁声で「美の極致!」と叫んだら、それは強烈な罵倒。だが、その行動には謎も多かった。あれから30数年、翻訳者となった志摩はモスクワに赴きオリガの半生を辿る。苛酷なスターリン時代を、伝説の踊子はどう生き抜いたのか。感動の長編小説、待望の文庫化。
この作品によって、米原万里は名エッセイストから本格的な小説家へと歩みだした。「おもしろい」「感動した」という賛辞の嵐のなかで、実験的な小説技法も注目の的になった。たとえば、第一の物語のなかに第二の物語が仕込まれており、その第二のなかに第三の、第三のなかに第四……というように重層物語群が深い謎を生み出してゆく凝った構造――ロシアの伝説的な踊り子の悲劇的生涯を浮き上がらせるために、米原はマトリョーシュカ(入れ子式の木製人形)の構造を小説に取り込んだのだ。第二、第三、第四と新しい物語が現われるたびに、独裁者とその取り巻きたちの妄想が作り上げた〈国家〉なるものの壮大なウソが暴かれて行く過程は圧巻だった。もう一つ、「ヒロインの掏(す)り替(か)え」という大胆不敵な手法が読者を驚かせた。そして当然、だれもが次の小説を期待した。けれどもその願いは……叶えられることはなかった。

【この解説が収録されている書籍】
井上ひさしの読書眼鏡 / 井上 ひさし
井上ひさしの読書眼鏡
  • 著者:井上 ひさし
  • 出版社:中央公論新社
  • 装丁:文庫(185ページ)
  • 発売日:2015-10-23
  • ISBN-10:4122061806
  • ISBN-13:978-4122061804
内容紹介:
面白くて、恐ろしい本の数々-。足かけ四年にわたり『読売新聞』読書面に連載された書評コラム「井上ひさしの読書眼鏡」三十四編。そして、藤沢周平、米原万里の本を論じる。著者の遺稿となった書評集。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

オリガ・モリソヴナの反語法  / 米原 万里
オリガ・モリソヴナの反語法
  • 著者:米原 万里
  • 出版社:集英社
  • 装丁:文庫(531ページ)
  • 発売日:2005-10-20
  • ISBN-10:4087478750
  • ISBN-13:978-4087478754
内容紹介:
1960年、チェコのプラハ・ソビエト学校に入った志摩は、舞踊教師オリガ・モリソヴナに魅了された。老女だが踊りは天才的。彼女が濁声で「美の極致!」と叫んだら、それは強烈な罵倒。だが、その… もっと読む
1960年、チェコのプラハ・ソビエト学校に入った志摩は、舞踊教師オリガ・モリソヴナに魅了された。老女だが踊りは天才的。彼女が濁声で「美の極致!」と叫んだら、それは強烈な罵倒。だが、その行動には謎も多かった。あれから30数年、翻訳者となった志摩はモスクワに赴きオリガの半生を辿る。苛酷なスターリン時代を、伝説の踊子はどう生き抜いたのか。感動の長編小説、待望の文庫化。

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初出メディア

米原万里展「ロシア語通訳から作家へ」図録

米原万里展「ロシア語通訳から作家へ」図録 2008年10月

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