書評

『ウジョとソナ 独立運動家夫婦の子育て日記』(里山社)

  • 2020/10/24
ウジョとソナ 独立運動家夫婦の子育て日記 / パク・ゴヌン
ウジョとソナ 独立運動家夫婦の子育て日記
  • 著者:パク・ゴヌン
  • 翻訳:神谷 丹路
  • 出版社:里山社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(368ページ)
  • 発売日:2020-07-15
  • ISBN-10:4907497113
  • ISBN-13:978-4907497118
内容紹介:
韓国独立運動家の実像を子育てという普遍的視点から炙り出すグラフィックノベル。戦火で夫婦が記したのは、娘の成長と人間の彷徨え…

命を守り、命をつなぐ 戦火の中の家族の営み

歴史を作るのは国ではなく、人間の営みである。1938年から46年まで、大韓民国臨時政府の独立運動家として中国へ渡った夫婦が、日本軍の侵攻から逃げながら、娘への愛情を注ぎ続けた。夫婦が実際に残した日記を孫娘が編纂し、それをグラフィックノベル化したのが本書である。

娘・ジェシーを出産してわずか2週間後に汽車旅を強いられ、バスは崖から落ち、船は岩礁に激突し、幾度と身の危険に晒される。身近に迫る死を直視しながら、目の前の小さな命を守り抜く。戦火に逆らうように、娘はすくすくと成長していく。

「赤ん坊の心で生きている人は純粋な人だと、まるで特別のことのように言ったりするが、ほんとうは誰もが皆、生まれたときと同じ心をもって生きているはずだ」

娘の無邪気な表情に救われながら、人々から失われていく表情を憂える。戦火で奪われるのは住まいや命だけではない。人に自分の思いを伝える意欲そのものが剝奪されてしまう。

「小さな仕草、発する声、その一つ一つが私たちにはどれほど尊く大切だったか」

2人目の子供が生まれた時、女の子だと伝えると、周囲に失望が広がった。

「男の子が生まれなかったと残念がるこの現実こそ情けない」

歴史は、視点によって風景が変わる。この作品には、日本軍による無残な攻撃が描かれる。懸命に命をつなぐ夫婦と娘の頭上に爆撃を繰り返す。

戦争の歴史は、生き延びようとした人々の営みの集積であると同時に、生き延びることのできなかった人々の営みの集積でもある。そして、戦争とは、国と国の争いである前に、集団から個人を守る争いなのだと改めて知ることとなった。
ウジョとソナ 独立運動家夫婦の子育て日記 / パク・ゴヌン
ウジョとソナ 独立運動家夫婦の子育て日記
  • 著者:パク・ゴヌン
  • 翻訳:神谷 丹路
  • 出版社:里山社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(368ページ)
  • 発売日:2020-07-15
  • ISBN-10:4907497113
  • ISBN-13:978-4907497118
内容紹介:
韓国独立運動家の実像を子育てという普遍的視点から炙り出すグラフィックノベル。戦火で夫婦が記したのは、娘の成長と人間の彷徨え…

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