書評

『建築家は住宅で何を考えているのか』(PHP研究所)

  • 2022/11/25
建築家は住宅で何を考えているのか / 難波 和彦
建築家は住宅で何を考えているのか
  • 著者:難波 和彦
  • 出版社:PHP研究所
  • 装丁:新書(302ページ)
  • 発売日:2008-09-13
  • ISBN-10:4569701973
  • ISBN-13:978-4569701974
内容紹介:
「理念」なき住宅に明日はない。――安藤忠雄(序文より)PLASTIC HOUSE[隈研吾]、ニラハウス[藤森照信+大嶋信道]、上原の家[みかんぐみ]、森山邸[西沢立衛]、梅林の家[妹島和世]、住居NO.22[内藤… もっと読む
「理念」なき住宅に明日はない。――安藤忠雄(序文より)
PLASTIC HOUSE[隈研吾]、ニラハウス[藤森照信+大嶋信道]、上原の家[みかんぐみ]、森山邸[西沢立衛]、梅林の家[妹島和世]、住居NO.22[内藤廣]、住吉の長屋[安藤忠雄]、ヒルサイドテラス[槇文彦]……。
施主の要求はもとより、敷地や予算など多くの条件の下で、建築家たちが表現しようとするものとは。
一般の人々にとって「建築」というものへの関心や理解が深まり、家族のあり方が多様化した現代で、住宅とはどのように生まれ、どのような役割を果たしているのか。
「家族像とプランニング」「ライフスタイル」「集住/かたち」「街/風景」「工業化と商品化」「リノベーションの可能性」「エコロジカルな住宅」「素材/構法」「ちいさな家」「住みつづける家」――
これからの住宅にとって鍵となる10のテーマに沿って、豊富なカラー写真と図面とともに、41の作品を紹介。「家」にこめられた建築家の意思を探る。

住宅建築について考える教科書

むろん私は建築家ではないし、また建築を大学で専攻したわけでもない。しかし、今までに、自宅を三度建て替え、別荘を二軒建て、オフィスに使っているマンションのリノベーションと、現在進行中の老父の家のリノベーション、都合七回もの家普請に関わってきた。

また、イギリスでも、12世紀建築の領主館、19世紀末のテラスハウスとコートハウス、20世紀初頭の一戸建て、1960年代のマンション、と多様な住居経験を持ってきた。

で、『思いどおりの家を造る』という本を書き、『思想する住宅』という本も書いている関係から、いわば敵情視察とでもいうような気持ちで、この本を読んでみた。

豊富な図版と共に多様な住宅コンセプトの展覧会となっている点で、この本はとても面白い。具体的な一つ一つの家となると、賛成できるのもあり、こんな家はご免だなあ、というのもあって、この本自体が、住宅建築についての一種の混とんとした模索の現状を垣間見せる。

けれども、なかで、編者の一人難波和彦さんが、日本の住宅が、これからスクラップ&ビルドの既往に再考を加えて、リノベーションの可能性を展開すべきこと、そのために、「建物の熟成と風化の見直し」ということを提唱しているのは、おおいに同感し、また力づけられた。私も、かねてから日本人の間に自明のこととしてある土地神話と、家の耐用年数という思考法に大きな「?」を投げ掛けてきたからである。

その意味で、今日本の建築家が、奇矯な大建築ばかりでなく、現実的な住宅に目を向けて、それをどう考えようとしているのかを知る、これはよい教科書となっている。
建築家は住宅で何を考えているのか / 難波 和彦
建築家は住宅で何を考えているのか
  • 著者:難波 和彦
  • 出版社:PHP研究所
  • 装丁:新書(302ページ)
  • 発売日:2008-09-13
  • ISBN-10:4569701973
  • ISBN-13:978-4569701974
内容紹介:
「理念」なき住宅に明日はない。――安藤忠雄(序文より)PLASTIC HOUSE[隈研吾]、ニラハウス[藤森照信+大嶋信道]、上原の家[みかんぐみ]、森山邸[西沢立衛]、梅林の家[妹島和世]、住居NO.22[内藤… もっと読む
「理念」なき住宅に明日はない。――安藤忠雄(序文より)
PLASTIC HOUSE[隈研吾]、ニラハウス[藤森照信+大嶋信道]、上原の家[みかんぐみ]、森山邸[西沢立衛]、梅林の家[妹島和世]、住居NO.22[内藤廣]、住吉の長屋[安藤忠雄]、ヒルサイドテラス[槇文彦]……。
施主の要求はもとより、敷地や予算など多くの条件の下で、建築家たちが表現しようとするものとは。
一般の人々にとって「建築」というものへの関心や理解が深まり、家族のあり方が多様化した現代で、住宅とはどのように生まれ、どのような役割を果たしているのか。
「家族像とプランニング」「ライフスタイル」「集住/かたち」「街/風景」「工業化と商品化」「リノベーションの可能性」「エコロジカルな住宅」「素材/構法」「ちいさな家」「住みつづける家」――
これからの住宅にとって鍵となる10のテーマに沿って、豊富なカラー写真と図面とともに、41の作品を紹介。「家」にこめられた建築家の意思を探る。

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スミセイベストブック

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