中身は時代劇論で映画論で大衆文化論で近代化論で江戸文学論でテレビ論で…もう大変。東映チャンバラ映画→残酷時代劇→ヤクザ映画→実録ヤクザ映画とか、歌舞伎→新派→新国劇→女剣劇→ストリップとか、講談→講談速記本→新講談→大衆小説→中間小説とか、明治~昭和のサブカルチャーの流れがわかる教科書だ。
作品論では忠臣蔵論や黒澤明の『用心棒』や内田吐夢『宮本武蔵・一乗寺の決闘』や…、そうかと膝を打つ考察が山盛りだ。特に中里介山『大菩薩峠』の机龍之助論(冒頭で老巡礼を斬殺する理由がなぜ説明されない)は出色だ。筆は勢い余って男性女性の本質論を挿画入りで三○頁にわたって展開。
男が女を殺すのは、自分とは異質な論理の存在をそこ=女の中に見つけてしまうからです。
ここを読むだけで元が取れる。橋本氏の天才に圧倒されっ放し。ありがとう、脱帽です!