書評

『池上彰の宗教がわかれば世界が見える』(文藝春秋)

  • 2017/08/22
池上彰の宗教がわかれば世界が見える  / 池上 彰
池上彰の宗教がわかれば世界が見える
  • 著者:池上 彰
  • 出版社:文藝春秋
  • 装丁:単行本(269ページ)
  • 発売日:2011-07-01
  • ISBN-10:4166608142
  • ISBN-13:978-4166608140
内容紹介:
人はなぜ宗教を求めるのか?日本人は「無宗教」なのか?スピリチュアルブームの正体は?仏教、キリスト教、イスラム教の3大宗教から、神道、ユダヤ教まで、7人の賢人と池上さんが読み解いた。世界を正しく理解するために必要なエッセンスがこの一冊に。

“宗教本ブーム”の鍵は団塊世代か

最近のベストセラーリストを見ていると、橋爪大三郎&大澤真幸『ふしぎなキリスト教』(講談社現代新書)はじめ宗教関係の本が多いのに気づく。東日本大震災から6カ月、いまだ復興も原発事故収束の道筋も見えないのだから当然かとも思うが、島田裕巳『葬式は、要らない』(幻冬舎新書)がベストセラーになったのは震災より1年以上も前。宗教本が売れることについて思いをいたすべきなのは、半年前の震災よりもむしろ10年前の同時多発テロなのか。

ふしぎなキリスト教  / 橋爪 大三郎,大澤 真幸
ふしぎなキリスト教
  • 著者:橋爪 大三郎,大澤 真幸
  • 出版社:講談社
  • 装丁:新書(352ページ)
  • 発売日:2011-05-18
  • ISBN-10:4062881004
  • ISBN-13:978-4062881005
内容紹介:
日本人の神様とGODは何が違うか?起源からイエスの謎、近代社会への影響まですべての疑問に答える最強の入門書。挑発的な質問と明快な答え、日本を代表する二人の社会学者が徹底対論。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

葬式は、要らない  / 島田 裕巳
葬式は、要らない
  • 著者:島田 裕巳
  • 出版社:幻冬舎
  • 装丁:新書(186ページ)
  • 発売日:2010-01-28
  • ISBN-10:4344981588
  • ISBN-13:978-4344981584
内容紹介:
日本人の葬儀費用は平均231万円。これはイギリスの12万円、韓国の37万円と比較して格段に高い。浪費の国アメリカでさえ44万円だ。実際、欧米の映画等で見る葬式はシンプルで、金をかけているよ… もっと読む
日本人の葬儀費用は平均231万円。これはイギリスの12万円、韓国の37万円と比較して格段に高い。浪費の国アメリカでさえ44万円だ。実際、欧米の映画等で見る葬式はシンプルで、金をかけているように見えない。対して我が国といえば巨大な祭壇、生花そして高額の戒名だが、いつからかくも豪華になったのか。どんな意味があるのか。古代から現代に至る葬儀様式を鑑みて日本人の死生観の変遷をたどりつつ、いま激しく変わる最新事情から、葬式無用の効用までを考察。葬式に金をかけられない時代の画期的な1冊。

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ソ連邦の解体と東欧共産圏の崩壊によってもたらされたのは、資本主義の勝利などではなく、新たな宗教戦争だった。イデオロギー対立による戦争も怖いが、宗教戦争はそれ以上に血なまぐさく、陰惨である。しかし、ほとんどの宗教は人びとの平安と幸福を願うものなのに、なぜそれが深刻な対立をもたらすのか。そこがいまひとつわからない。
『池上彰の宗教がわかれば世界が見える』は、仏教やキリスト教、神道、イスラム教などの研究者や関係者に、その宗教の根本を訊ねるインタビュー集である。島田裕巳や解剖学者の養老孟司へのインタビューもある。

島田裕巳は、団塊の世代が高齢者になったことで、日本人の宗教との関わりかたに大きな変化が起きていると語る。養老孟司は「葬式は要らない」観には批判的で、それがあの世代の「意識中心主義」によってもたらされたものだと指摘する。鍵は団塊なのか。

どの宗教も、それなりに立派なことをいっている。信者が、オラが神様が最高だ、と思うのは当然だろう。だが、その立派であるはずの宗教が、なぜ他の宗教・宗派については不寛容になり、殺人や戦争まで厭わないのかは、本書を読んでもよくわからない。宗教がもたらす狂気としか思えない。

自分が天国に行くためなら他人を殺してもいいなんていう人間は、天国どころか地獄に堕ちて永久に苦しみ続けるだろう、というのが私の宗教観である。
池上彰の宗教がわかれば世界が見える  / 池上 彰
池上彰の宗教がわかれば世界が見える
  • 著者:池上 彰
  • 出版社:文藝春秋
  • 装丁:単行本(269ページ)
  • 発売日:2011-07-01
  • ISBN-10:4166608142
  • ISBN-13:978-4166608140
内容紹介:
人はなぜ宗教を求めるのか?日本人は「無宗教」なのか?スピリチュアルブームの正体は?仏教、キリスト教、イスラム教の3大宗教から、神道、ユダヤ教まで、7人の賢人と池上さんが読み解いた。世界を正しく理解するために必要なエッセンスがこの一冊に。

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初出メディア

週刊朝日

週刊朝日 2011年9月30日

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