書評

『〈公正〉を乗りこなす: 正義の反対は別の正義か』(太郎次郎社エディタス)

  • 2024/01/05
〈公正〉を乗りこなす: 正義の反対は別の正義か / 朱 喜哲
〈公正〉を乗りこなす: 正義の反対は別の正義か
  • 著者:朱 喜哲
  • 出版社:太郎次郎社エディタス
  • 装丁:単行本(272ページ)
  • 発売日:2023-08-29
  • ISBN-10:4811808606
  • ISBN-13:978-4811808604
内容紹介:
正義は暴走しないし、人それぞれでもない──。アメリカ大統領選挙から、日本の「道徳」の授業まで、現代において「正義」や「公正」といった「正しいことば」はどのように使われているかを検… もっと読む
正義は暴走しないし、人それぞれでもない──。

アメリカ大統領選挙から、日本の「道徳」の授業まで、現代において「正義」や「公正」といった「正しいことば」はどのように使われているかを検討。

ジョン・ロールズ、リチャード・ローティ、アイザイア・バーリン、ジュディス・シュクラー、アイリス・マリオン・ヤング、スタンリー・カヴェルなどの議論を参照しながら、「正しいことば」の使いこなし方をプラグマティズム言語哲学から探る。

「正しさ」とはなにかを考えるうえで、わたしたち自身の〝ことばづかい〞を通して「正しいことば」をとらえなおす画期的論考。

●目次

序章○正しいことばの使い方
第I部◎「正義」というテクニック
1章○「正義」の模範運転とジョン・ロールズ
2章○「正義」の前提としての「公正」
3章○道徳教育と「正しいことば」の危険運転
4章○「道徳としての正義」とトランプ現象
コラム1●「交差性(インターセクショナリティ)」が行き交う世界

第II部◎「正しいことば」のよりどころ
5章○「会話」を止めるとはどういうことか
6章○「関心」をもつのはいいことか
7章○「自由」を大切に使う
8章○わたしたちの「残酷さ」と政治
コラム2●だれも「中立」ではいられない

第III部◎「公正(フェアネス)」を乗りこなす
9章○理論的なだけでは「公正」たりえない
10章○「公」と「私」をつらぬく正義
11章○「公正」というシステムの責任者
12章○正義をめぐって会話する「われわれ」
うまいタイトル。<公正>を自転車のように使いこなそうという意味だ。神棚に置いてあがめたてまつるのでもなく、黄門様の印籠のように誇示するのでもなく。<公正>には「フェアネス」とふりがな。公平とも正義とも善ともちょっと違う。言語哲学を研究する著者は、ジョン・ロールズやリチャード・ローティなどを参照しながら、じょうずな乗りこなし方を考える。

「論破」がもてはやされているけれども、自転車の運転にたとえれば、それは「事故」のようなもの。なぜなら、コミュニケーションを断ち切ってしまうから。論破して相手を黙らせ、屈服させても、何も生まれない。「それぞれに正義がある」とか「正義の反対は悪ではなく、別の正義だ」などという相対主義も事故。アメリカのトランプ現象は事故の典型だし、日本の学校で行われている道徳教育も事故につながる。

この社会では自分とは考えの違う人とも共存していかなければならない。そのためには、ときには他人に対して積極的に無関心であることも必要だ。とにかく会話を止めるな。この本は分断と対立の時代を生きぬくためのハンドブックである。
〈公正〉を乗りこなす: 正義の反対は別の正義か / 朱 喜哲
〈公正〉を乗りこなす: 正義の反対は別の正義か
  • 著者:朱 喜哲
  • 出版社:太郎次郎社エディタス
  • 装丁:単行本(272ページ)
  • 発売日:2023-08-29
  • ISBN-10:4811808606
  • ISBN-13:978-4811808604
内容紹介:
正義は暴走しないし、人それぞれでもない──。アメリカ大統領選挙から、日本の「道徳」の授業まで、現代において「正義」や「公正」といった「正しいことば」はどのように使われているかを検… もっと読む
正義は暴走しないし、人それぞれでもない──。

アメリカ大統領選挙から、日本の「道徳」の授業まで、現代において「正義」や「公正」といった「正しいことば」はどのように使われているかを検討。

ジョン・ロールズ、リチャード・ローティ、アイザイア・バーリン、ジュディス・シュクラー、アイリス・マリオン・ヤング、スタンリー・カヴェルなどの議論を参照しながら、「正しいことば」の使いこなし方をプラグマティズム言語哲学から探る。

「正しさ」とはなにかを考えるうえで、わたしたち自身の〝ことばづかい〞を通して「正しいことば」をとらえなおす画期的論考。

●目次

序章○正しいことばの使い方
第I部◎「正義」というテクニック
1章○「正義」の模範運転とジョン・ロールズ
2章○「正義」の前提としての「公正」
3章○道徳教育と「正しいことば」の危険運転
4章○「道徳としての正義」とトランプ現象
コラム1●「交差性(インターセクショナリティ)」が行き交う世界

第II部◎「正しいことば」のよりどころ
5章○「会話」を止めるとはどういうことか
6章○「関心」をもつのはいいことか
7章○「自由」を大切に使う
8章○わたしたちの「残酷さ」と政治
コラム2●だれも「中立」ではいられない

第III部◎「公正(フェアネス)」を乗りこなす
9章○理論的なだけでは「公正」たりえない
10章○「公」と「私」をつらぬく正義
11章○「公正」というシステムの責任者
12章○正義をめぐって会話する「われわれ」

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2023年12月2日

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