書評

『僕は珈琲』(光文社)

  • 2024/05/08
僕は珈琲 / 片岡 義男
僕は珈琲
  • 著者:片岡 義男
  • 出版社:光文社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(272ページ)
  • 発売日:2023-01-24
  • ISBN-10:4334953581
  • ISBN-13:978-4334953584
内容紹介:
珈琲を片手に、ゆっくりと読みたいエッセイ大ヒット作『珈琲が呼ぶ』から5年。片岡義男が新たに書き下ろした52篇の珈琲エッセイ。貴重な写真も38点掲載。喫茶店を舞台にした短編小説も特別… もっと読む
珈琲を片手に、ゆっくりと読みたいエッセイ
大ヒット作『珈琲が呼ぶ』から5年。
片岡義男が新たに書き下ろした52篇の珈琲エッセイ。
貴重な写真も38点掲載。
喫茶店を舞台にした短編小説も特別収録、
エッセイでは、その創作過程までも明かす。

大瀧詠一/スティーヴ・マックイーン/男はつらいよ/刑事コロンボ/植木等/
チャールズ・ブロンソン/歯科診察券/宮沢賢治/リチャード・ブローティガン/
髭面のエルヴィス/ドトールのミラノサンド/植草甚一/銭湯/天国と地獄/
モーニング・サーヴィス/大統領の陰謀/リック・ダンコ/危険な年齢……
52篇のエッセイに登場する人物、モノ、事柄は変幻自在。
これらがどう珈琲と関係してくるのか、片岡義男の筆致が冴える。

「遠く離れたところにぽつんとひとりでいるのが僕だ、
と長いあいだ、僕は思ってきた。
そのように自分を保ってきた、という自負は充分にあった」

(本文より)
ロック、ジャズ、昭和歌謡、洋画、邦画、文房具……片岡義男にひらめきを与える「詩神(ミューズ)」はいろいろあるが、珈琲(コーヒー)もその大切な一つだ。

片岡義男はいろいろなものに耳を澄ます。店で注文をするときの「僕は珈琲」というのは日本語ならではの言い方だ。作者はそういう細かい言語考察などもしながら珈琲を飲む。音にも敏感だ。片岡の頭文字でもある「カ」は「水音が耳に入る距離のところを流れる川のような音だ」と。

珈琲のことを「コーシー」と発音する「寅さん」シリーズにはとりわけ愛着が深い。英語字幕付きで視聴していると、おいちゃんの「馬鹿だねえ!」という名台詞が“Acompletefool!”と訳されていた。「だねえ!」という強調をcompleteで表したのだろうと感心する。

「謎なら解いてみて」という短編小説では、主人公は喫茶店の主人に、この店をこのまま継いでうちの娘と結婚してくれないかと、藪から棒に言われる。ほかのエッセイにも、喫茶店を居抜きで譲られる挿話が出てくるが、これは片岡義男の美学のなかで最も合理的で完璧な方法なのではないか。片岡流哲学の本だ。
僕は珈琲 / 片岡 義男
僕は珈琲
  • 著者:片岡 義男
  • 出版社:光文社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(272ページ)
  • 発売日:2023-01-24
  • ISBN-10:4334953581
  • ISBN-13:978-4334953584
内容紹介:
珈琲を片手に、ゆっくりと読みたいエッセイ大ヒット作『珈琲が呼ぶ』から5年。片岡義男が新たに書き下ろした52篇の珈琲エッセイ。貴重な写真も38点掲載。喫茶店を舞台にした短編小説も特別… もっと読む
珈琲を片手に、ゆっくりと読みたいエッセイ
大ヒット作『珈琲が呼ぶ』から5年。
片岡義男が新たに書き下ろした52篇の珈琲エッセイ。
貴重な写真も38点掲載。
喫茶店を舞台にした短編小説も特別収録、
エッセイでは、その創作過程までも明かす。

大瀧詠一/スティーヴ・マックイーン/男はつらいよ/刑事コロンボ/植木等/
チャールズ・ブロンソン/歯科診察券/宮沢賢治/リチャード・ブローティガン/
髭面のエルヴィス/ドトールのミラノサンド/植草甚一/銭湯/天国と地獄/
モーニング・サーヴィス/大統領の陰謀/リック・ダンコ/危険な年齢……
52篇のエッセイに登場する人物、モノ、事柄は変幻自在。
これらがどう珈琲と関係してくるのか、片岡義男の筆致が冴える。

「遠く離れたところにぽつんとひとりでいるのが僕だ、
と長いあいだ、僕は思ってきた。
そのように自分を保ってきた、という自負は充分にあった」

(本文より)

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2023年3月11日

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