書評

『路上の陽光』(書肆侃侃房)

  • 2024/06/21
路上の陽光 / ラシャムジャ
路上の陽光
  • 著者:ラシャムジャ
  • 翻訳:星 泉
  • 出版社:書肆侃侃房
  • 装丁:単行本(272ページ)
  • 発売日:2022-03-30
  • ISBN-10:486385515X
  • ISBN-13:978-4863855151
内容紹介:
チベット文学を牽引する作家ラシャムジャ。代表作「路上の陽光」をふくむ日本オリジナルの短編集。日本を舞台にした短編「遥かなるサクラジマ」も収録!10歳の少年が山で父の放牧の手伝い… もっと読む
チベット文学を牽引する作家ラシャムジャ。代表作「路上の陽光」をふくむ日本オリジナルの短編集。

日本を舞台にした短編「遥かなるサクラジマ」も収録!

10歳の少年が山で父の放牧の手伝いをしながら成長していく姿を描く「西の空のひとつ星」、センチェンジャの横暴におびえる中学校の教室を舞台に気弱な男子ラトゥクが勇気を持つにいたる「川のほとりの一本の木」、村でたった一人の羊飼いとなった15歳の青年が生きとし生けるものの幸せについて考える「最後の羊飼い」など8作品を収める。

ラサは懐の深い町だ。見た目も言語も異なる様々な民族が、あらゆる通りを川の流れのように行き交っている。(本文より)

【目次】
路上の陽光
眠れる川
風に託す
西の空のひとつ星
川のほとりの一本の木
四十男の二十歳の恋
最後の羊飼い
遥かなるサクラジマ
訳者解説
現代チベット文学の短篇集。収録された8篇の作品の多様性に驚く。

表題作はチベットいちばんの都会、ラサを舞台にした若い男女の話。橋の上にたむろして、日雇い仕事の声が掛かるのを待っているプンナムたち。プンナムの気を引きたいランゼー。ふたりは近郊の農村からやってきた若者である。読んでいてくすぐったくなるような淡い恋のお話だが、四駆に乗った金持ち男が登場してランゼーの運命は変わっていく。「眠れる川」はその続篇で、プンナムは三輪自転車タクシーのドライバーに、ランゼーは四駆の男の愛人になっている。ラサの強い日差しの下を疾走する三輪自転車がせつない。

ぼくが勝手に抱いていたチベットのイメージにもっとも近いのが「最後の羊飼い」。羊飼いの若者が盗まれた羊を捜しながら、生きとし生けるものについて思索する。

対照的なのが「四十男の二十歳の恋」。悪天候で出発見合わせとなった西寧の空港で、かつて恋人同士だった男女が偶然再会する。北京に住む男はラサに、ラサに住む女は北京に向かう途中。ふたりの会話から現代中国のなかのチベットという複雑な社会の構造が覗く。
路上の陽光 / ラシャムジャ
路上の陽光
  • 著者:ラシャムジャ
  • 翻訳:星 泉
  • 出版社:書肆侃侃房
  • 装丁:単行本(272ページ)
  • 発売日:2022-03-30
  • ISBN-10:486385515X
  • ISBN-13:978-4863855151
内容紹介:
チベット文学を牽引する作家ラシャムジャ。代表作「路上の陽光」をふくむ日本オリジナルの短編集。日本を舞台にした短編「遥かなるサクラジマ」も収録!10歳の少年が山で父の放牧の手伝い… もっと読む
チベット文学を牽引する作家ラシャムジャ。代表作「路上の陽光」をふくむ日本オリジナルの短編集。

日本を舞台にした短編「遥かなるサクラジマ」も収録!

10歳の少年が山で父の放牧の手伝いをしながら成長していく姿を描く「西の空のひとつ星」、センチェンジャの横暴におびえる中学校の教室を舞台に気弱な男子ラトゥクが勇気を持つにいたる「川のほとりの一本の木」、村でたった一人の羊飼いとなった15歳の青年が生きとし生けるものの幸せについて考える「最後の羊飼い」など8作品を収める。

ラサは懐の深い町だ。見た目も言語も異なる様々な民族が、あらゆる通りを川の流れのように行き交っている。(本文より)

【目次】
路上の陽光
眠れる川
風に託す
西の空のひとつ星
川のほとりの一本の木
四十男の二十歳の恋
最後の羊飼い
遥かなるサクラジマ
訳者解説

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2022年8月6日

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