書評

『グラウンド・ゼロを書く-日本文学と原爆-』(法政大学出版局)

  • 2024/08/03
グラウンド・ゼロを書く-日本文学と原爆- / ジョン・W・トリート
グラウンド・ゼロを書く-日本文学と原爆-
  • 著者:ジョン・W・トリート
  • 翻訳:水島 裕雅,成定 薫,野坂 昭雄 監訳
  • 出版社:法政大学出版局
  • 装丁:単行本(678ページ)
  • 発売日:2010-07-05
  • ISBN-10:4588470043
  • ISBN-13:978-4588470042
内容紹介:
原爆文学とはなにか──「直視しがたいもの」を正面から見すえ,「沈黙でしか語りえないもの」を既成の言語によって語ろうとするその特質を分析した本書は,広島と長崎の文学を中心としながら,非被… もっと読む
原爆文学とはなにか──「直視しがたいもの」を正面から見すえ,「沈黙でしか語りえないもの」を既成の言語によって語ろうとするその特質を分析した本書は,広島と長崎の文学を中心としながら,非被爆者の作品にも視野を広げ,文学史や文芸批評はもとより,哲学や精神分析学,歴史学や政治学,科学史の方法をも駆使して説得力ある議論を展開する.唯一の被爆国である
日本の研究者が書きえなかった包括的かつ緻密な原爆文学研究の大著.

序章
残虐行為を言葉に
ジャンルとポスト・ヒロシマの表象
三つの論争
原民喜とドキュメンタリーの誤信
詩自身へ抗う詩
大田洋子と語り手の位置
大江健三郎──ヒューマニズムとヒロシマ
井伏鱒二──自然,郷愁,記憶
長崎と人間の未来
原爆と核と全体性──小田実
結語──それから,のこと
原注・訳注/参考文献/人名索引

原爆文学、世界での受容示す

8月6日と9日。原爆が投下された夏がやってくる。

原爆や核兵器を、日本語を使って文学として表現してきた人は多くいる。原民喜、峠三吉、大田洋子、井伏鱒二、林京子。あるいは大江健三郎や小田実。他にもたくさんの文学者が、直接的な経験の有無を問わず、原爆に向き合ってきた。

だが彼らの文学がどのように読まれているのか、特に日本語以外の言語圏でどう受容されているのか、わからなかった。

著者のジョン・W・トリートは日本文学研究者。イェール大学で教鞭をとっている。日本の原爆文学に関する著書も幾つかある。この分厚くて高価な本の原著は1995年に出版されている。ようやく海外の原爆文学の評価を読む機会を得た。

この本を読んでいて、いちばん驚いたのは(考えてみれば当たり前のことだが)、トリートが実に日本の原爆文学に詳しいということであり、場合によっては同人誌レベルまで小説を読み込んでいることだ。膨大な作品読解が、この書物の背後にはある。原爆文学はすでに日本文学ではない。世界文学の中に確固とした位置を占めているのだ。水島裕雅ほか監訳。


グラウンド・ゼロを書く-日本文学と原爆- / ジョン・W・トリート
グラウンド・ゼロを書く-日本文学と原爆-
  • 著者:ジョン・W・トリート
  • 翻訳:水島 裕雅,成定 薫,野坂 昭雄 監訳
  • 出版社:法政大学出版局
  • 装丁:単行本(678ページ)
  • 発売日:2010-07-05
  • ISBN-10:4588470043
  • ISBN-13:978-4588470042
内容紹介:
原爆文学とはなにか──「直視しがたいもの」を正面から見すえ,「沈黙でしか語りえないもの」を既成の言語によって語ろうとするその特質を分析した本書は,広島と長崎の文学を中心としながら,非被… もっと読む
原爆文学とはなにか──「直視しがたいもの」を正面から見すえ,「沈黙でしか語りえないもの」を既成の言語によって語ろうとするその特質を分析した本書は,広島と長崎の文学を中心としながら,非被爆者の作品にも視野を広げ,文学史や文芸批評はもとより,哲学や精神分析学,歴史学や政治学,科学史の方法をも駆使して説得力ある議論を展開する.唯一の被爆国である
日本の研究者が書きえなかった包括的かつ緻密な原爆文学研究の大著.

序章
残虐行為を言葉に
ジャンルとポスト・ヒロシマの表象
三つの論争
原民喜とドキュメンタリーの誤信
詩自身へ抗う詩
大田洋子と語り手の位置
大江健三郎──ヒューマニズムとヒロシマ
井伏鱒二──自然,郷愁,記憶
長崎と人間の未来
原爆と核と全体性──小田実
結語──それから,のこと
原注・訳注/参考文献/人名索引

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初出メディア

日本経済新聞

日本経済新聞 2010年8月4日

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