書評
『錯乱の日本文学: 建築/小説をめざして』(航思社)
建築から作家を読み解く
いま、文芸批評がどう書かれているか――そんな関心をお持ちなら、ためらうことなく石川義正のこの本を勧めたい。取り上げられている作家は4人。小島信夫、大岡昇平、村上春樹、そして大江健三郎。彼らの小説を徹底して読み解きながら、その読解の中心に建築を導入する。磯崎新、原広司、伊東豊雄、コールハース。
建築と小錯乱の日本文学説はまるで魔法のように縫い合わされ、互いの要所を照らし出すのだ。個人的には、大江健三郎にとっての「塔」の読解が刮目(かつもく)させられた。その時代の建築物が作家の内部に打ち立てた像を批評家は鮮明に描き出す。
緻密な読解は批評の基本だが、それを建築へとつなげる腕力は著者の才能の証。
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