書評
『ずっと』(KADOKAWA)
恋から凌辱へ、少女の心揺らす
著者の森健には一度だけ会ったことがある。彼が「群像」新人賞を受賞した直後のことだった。受賞作『火薬と愛の星』は、ちょっと変わったファンタジーだった。あれから何年経(た)ったのだろう。森健の新作は、予想をはるかに超えている。ネットで知り合いになった男の指定した場所へ、ナオミは出かける。その男テルとの甘い初恋のような出会い。小説の前半は切ないくらい。だが、唐突にテルの部屋へ踏み込んできた男たちによって、ナオミは暴力とセックスの世界に引きずり込まれる。
話としては、甘い恋の前半と、暴力と凌辱(りょうじょく)の横行する後半でみごとな対照を成す。森は、そのいずれをも受け入れ、身体ごと反応していく女の子の皮膚感覚や心理を、克明に記す。ヤバい男たちにつかまって堕(お)ちた女の子の感覚を、緻密(ちみつ)に書き込んでいく。読んでいて苦しくなるくらいだ。
この小説の描写から思い出したのは、『イビサ』や『フィジーの小人』を書いていた頃の村上龍。それらの小説から十余年。森健は小説の描写の力を新しくみせてくれた。黄色いサングラスをしていきがっていた作家は一回り大きくなった。
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