書評
『トリオリズム』(小学館)
トヨザキ的評価軸:
◎「金の斧(親を質に入れても買って読め)」
「銀の斧(図書館で借りられたら読めば―)」
「鉄の斧(ブックオフで100円で売っていても読むべからず)」
ちょっと、そこのお嬢さん! 彼が“待つ”じゃございませんのよ、彼が”持つ”島なんですのよ。ギョウニンベンとテヘンじゃ、年収一億円ほどの差がありましてよ、おわかり?
おまけにお嬢さん、〈彼はわたくしを出迎えるために、滑走路一面にピンクのバラを敷き詰めていた〉んですの。でもって、そんな〈彼は、わたくしの足の前に両手を差し出〉して〈わたくしはその手の上に片足を載せ〉るってんですもの、この〈わたくし〉が自分だったらと思うと………………………悶絶!
冒頭からしてこんな具合。全篇これゴージャス&スキャンダラスな言説で彩られた、叶恭子様の「愛とセックスとお金」の指南エッセイを読んで、トヨザキ感服つかまつり候。どこの国の何様俺様恭子様だよってな日本人ばなれした派手なお暮らしぶりに加え、大富豪からグッドルッキング・ガイまでくわえ込み放題。女人の夢のすべてが、恭子様お一人の身体に詰まってる、そんな感じなんですもの。
恭子様が何よりも愛している、土地や不動産の権利書や株券などの有価証券が入った茶封筒を、さらりと手渡してくれるビリオネア(億万長者)。数千万円のキャッシュの塊がなっているクリスマストゥリーをプレゼントしてくれるアマン。恭子様を歓ばせるために、性技とルックスを磨く若い有名モデルたち。
お口ポカァーンとなるほどのモテモテぶりですけど、恭子様だって努力は怠りません。万全なボディケアは当たり前。アンダーヘアを脱毛し、太ももを開くと美しい羽を広げている姿になるバタフライのタトゥーを入れたり、〈ヴァギナのなかのタン(肉ひだ)で男性の亀頭をとらえ、彼の反応を見ながら、ヴァギナの筋肉をペニスに絡ませつつ〉〈腰を使わずして、ヴァギナの内部をわたくしの意のままに操縦することによって、ペニスを締めつけて愛でる〉といった憧れのポリネシアン・セックス技を体得。あらゆる意味で、あたくしども下々の女とはスケールが違いますの。
お金とセックスに貪欲な、世の良識に照らし合わせれば”異端”の極である己を、ここまで率直に表せる自信と高慢。オデはめっちゃ好き。恭子様というこの世のものならぬ”虚構”を愛で倒す、それがこのエッセイ集の正しい読み方なのです。
【この書評が収録されている書籍】
◎「金の斧(親を質に入れても買って読め)」
「銀の斧(図書館で借りられたら読めば―)」
「鉄の斧(ブックオフで100円で売っていても読むべからず)」
悶絶! 何様俺様恭子様のゴーシャス人生
その時、わたくしは彼の自家用ジェットで、カリブ海上空を飛んでいました.行き先は彼が持つ島。ヴィラでの数日間の滞在に、ご招待されたのです。
ちょっと、そこのお嬢さん! 彼が“待つ”じゃございませんのよ、彼が”持つ”島なんですのよ。ギョウニンベンとテヘンじゃ、年収一億円ほどの差がありましてよ、おわかり?
おまけにお嬢さん、〈彼はわたくしを出迎えるために、滑走路一面にピンクのバラを敷き詰めていた〉んですの。でもって、そんな〈彼は、わたくしの足の前に両手を差し出〉して〈わたくしはその手の上に片足を載せ〉るってんですもの、この〈わたくし〉が自分だったらと思うと………………………悶絶!
冒頭からしてこんな具合。全篇これゴージャス&スキャンダラスな言説で彩られた、叶恭子様の「愛とセックスとお金」の指南エッセイを読んで、トヨザキ感服つかまつり候。どこの国の何様俺様恭子様だよってな日本人ばなれした派手なお暮らしぶりに加え、大富豪からグッドルッキング・ガイまでくわえ込み放題。女人の夢のすべてが、恭子様お一人の身体に詰まってる、そんな感じなんですもの。
恭子様が何よりも愛している、土地や不動産の権利書や株券などの有価証券が入った茶封筒を、さらりと手渡してくれるビリオネア(億万長者)。数千万円のキャッシュの塊がなっているクリスマストゥリーをプレゼントしてくれるアマン。恭子様を歓ばせるために、性技とルックスを磨く若い有名モデルたち。
お口ポカァーンとなるほどのモテモテぶりですけど、恭子様だって努力は怠りません。万全なボディケアは当たり前。アンダーヘアを脱毛し、太ももを開くと美しい羽を広げている姿になるバタフライのタトゥーを入れたり、〈ヴァギナのなかのタン(肉ひだ)で男性の亀頭をとらえ、彼の反応を見ながら、ヴァギナの筋肉をペニスに絡ませつつ〉〈腰を使わずして、ヴァギナの内部をわたくしの意のままに操縦することによって、ペニスを締めつけて愛でる〉といった憧れのポリネシアン・セックス技を体得。あらゆる意味で、あたくしども下々の女とはスケールが違いますの。
誰かより秀でた“異端”でありたいのであれば、孤独でいる覚悟が必要なのです。
お金とセックスに貪欲な、世の良識に照らし合わせれば”異端”の極である己を、ここまで率直に表せる自信と高慢。オデはめっちゃ好き。恭子様というこの世のものならぬ”虚構”を愛で倒す、それがこのエッセイ集の正しい読み方なのです。
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