書評

『猫背の虎 動乱始末』(集英社)

  • 2018/10/24
猫背の虎 動乱始末 / 真保 裕一
猫背の虎 動乱始末
  • 著者:真保 裕一
  • 出版社:集英社
  • 装丁:単行本(360ページ)
  • 発売日:2012-04-05
  • ISBN-10:4087714489
  • ISBN-13:978-4087714487
内容紹介:
地震ですべてを失った板前は憎き男を見て追いかけ、夫の帰りを待つ女は瓦礫の中を妾のもとへ走ってしまう。息子のために危ない読売に手を出す戯作者がいれば、どさくさまぎれに吉原を逃げ出し… もっと読む
地震ですべてを失った板前は憎き男を見て追いかけ、夫の帰りを待つ女は瓦礫の中を妾のもとへ走ってしまう。息子のために危ない読売に手を出す戯作者がいれば、どさくさまぎれに吉原を逃げ出した遊女も現れる。さらに虎之助の恋路に暗雲が立ち込め、尊敬する父にも疑惑の影が…。さあ、どうする!?猫背の虎!恋と人情、謎解きに捕り物。動乱直後の江戸を舞台に繰り広げられる超エンターテインメント時代小説。

軽妙洒脱 新鮮な筆の運び

乱歩賞出身の著者は、近年歴史時代小説にも進出し、新境地を開いている。本書はその3作目。

前2作がやや重たい歴史小説だったのに比べ、今回はなじみやすい幕末、それも安政の大地震を背景に、南町奉行所同心がさっそうと活躍する、江戸ものである。雑誌に連載された長編小説だが、地震をテーマにした連作短編集としても、読むことができる。

亡父のあとを継いで、当番方の同心になった大田虎之助は、大地震を契機に臨時の市中見廻(みまわ)り役を、命じられる。大地震の混乱を背景に、虎之助が取り組むのは、板前が人違いで犯した刺傷事件、嫉妬に狂う女の赤ん坊誘拐など、五つの事件。穿鑿(せんさく)好きの母親と、口うるさい2人の姉を適当にあしらいつつ、御用聞きの松五郎らと人情味豊かに、事件の解決に当たる。軽妙洒脱(しゃだつ)な筆の運びが、これまでにない新鮮さを生んでいる。

著者には珍しい、シリーズものになりそうな期待を、抱かせられる。
猫背の虎 動乱始末 / 真保 裕一
猫背の虎 動乱始末
  • 著者:真保 裕一
  • 出版社:集英社
  • 装丁:単行本(360ページ)
  • 発売日:2012-04-05
  • ISBN-10:4087714489
  • ISBN-13:978-4087714487
内容紹介:
地震ですべてを失った板前は憎き男を見て追いかけ、夫の帰りを待つ女は瓦礫の中を妾のもとへ走ってしまう。息子のために危ない読売に手を出す戯作者がいれば、どさくさまぎれに吉原を逃げ出し… もっと読む
地震ですべてを失った板前は憎き男を見て追いかけ、夫の帰りを待つ女は瓦礫の中を妾のもとへ走ってしまう。息子のために危ない読売に手を出す戯作者がいれば、どさくさまぎれに吉原を逃げ出した遊女も現れる。さらに虎之助の恋路に暗雲が立ち込め、尊敬する父にも疑惑の影が…。さあ、どうする!?猫背の虎!恋と人情、謎解きに捕り物。動乱直後の江戸を舞台に繰り広げられる超エンターテインメント時代小説。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2012年6月10日

朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。

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