平野 啓一郎KEIICHIRO HIRANO
公式サイト: http://k-hirano.com/
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1975年愛知県蒲郡市生。北九州市出身。京都大学法学部卒。1999年在学中に文芸誌「新潮」に投稿した『日蝕』により第120回芥川賞を受賞。以後、数々の作品を発表し、各国で翻訳紹介されている。2004年には、文化庁の「文化交流使」として一年間、パリに滞在。2008年からは、三島由紀夫文学賞選考委員、東川写真賞審査員…もっと読む
「稔りの飽和」の静かな重み所謂「体内時計」の研究は、随分と進んでいるようで、東京大学の上田泰己氏の説明によると、人体の各器官には「時計…
「実に実に実に不快だった」その日の三島由紀夫発見された晩年の肉声ちょうどけさ六時に『暁の寺』が完成したんですよ。第三巻がやっと完成した。―…
〝我が事〟としての政治思想史―― 小野紀明『西洋政治思想史講義――精神史的考察自己について語ろうと、広大無辺な言葉の世界を見渡すと、他人にとっ…
傑作群の底に流れていたもの 谷崎潤一郎「創作ノート」を読み解く「創作ノート」というのは全集の目玉の一つで、私も当巻の刊行を首を長くして待っ…
「細雪」の妙子『細雪』は、言うまでもなく、谷崎潤一郎の代表作である。その「文豪」というイメージにとっては、『蓼喰う虫』や『吉野葛』だけでも…
私達自身のような「夭折の天才」 ドナルド・キーン『石川啄木』を読むドナルド・キーン氏の前著『正岡子規』は、俳句のみならず詩歌全般の革新者と…
誠実な懐疑家の肖像生前には、親しい交流を持ちながらも、他方で「文芸的な、余りに文芸的な」に見られるような論争も繰り広げた、芥川龍之介と谷崎…
魔術的博捜家の世界故種村季弘氏とは、生前に何度か、手紙のやりとりがあった。学生時代から、その博覧強記の仕事に魅了されていた私は、《日蝕》が…
花は秘せられて、しかも常に咲き、……『風姿花伝』は、能芸論書としては世阿弥のいわば処女作に当たるもので、成立は、今から大体、六百年ほど前、彼…
読者は山根忍と出会い、彼女を忘れない。田中慎弥氏は、私とは大いに資質の異なる作家だが、その作家となった背景には、幾つか私と似通ったところが…
天才の仕事大江氏の傑出した初期短篇群の中でも、私は殊の外、「不意の唖(おし)」が好きだ。一作家として読むと、些か気が滅入ってくるような天才…
そして、リヴェンジは果たされた木村政彦は、生き恥さらした男である。――武田泰淳の『司馬遷』の有名な冒頭に倣ったそんな一文が、私の頭を何度か過…
近代人としての鏡花先日、江戸川乱歩原作、三島由紀夫脚本の舞台『黒蜥蜴』を観た際、私は、美輪明宏氏扮する怪盗・黒蜥蜴が、功のあった部下に「爬…
「なのめなる」ことへの憧れ『紫式部日記』は、十七歳の頃の私の愛読書の一つだった。当時はまだ、満足に『源氏物語』も読破していなかった私が、ど…
独白の不穏生前の名声に比して、今日の横光利一を巡る状況は寂しい限りだが、日本近代文学史の反私小説的な系譜という意味では、芥川龍之介から横光…
「陰翳」は、いたるところに『陰翳礼讃』と「インターナショナル・スタイル」谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』の解釈は多様である。これを、メタフォリッ…
物書きにとって、自分が心の底から敬愛する人物について何かを書くというのは楽しい作業である筈だが、その人物の魅力が余りに圧倒的で、しかも著者…
逆説のモラリテ『鹿鳴館』は、政治的な意匠にくるまれた、愛に関する精妙なレッスンである。登場人物の一人、清原久雄は、「命がけ」の若き行動家と…
でっち上げられた衰耗「不巧の名作」と呼ばれるような古典的な文学作品であっても、それなりに流行(はや)り廃りはあるもので、例えばドストエフス…
ナフタの絶叫『魔の山』に出てくるナフタというオーストリア生まれの男は、トーマス・マンの全作品の中でも、恐らくは最もアクの強い、例外的に奇怪…