書評
『黄金の羅針盤(ライラの冒険)』(新潮社)
現在、映画化作品が大ヒット中の、ファンタジー小説の金字塔(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は2008年)。昨年は英国の児童文学賞、カーネギー賞の70年間の歴史におけるベスト1に選ばれた。「ライラの冒険」シリーズの第1部であり、文庫版は3部作全6巻で100万部を突破。小学生向けの軽装版も版を重ねる。
99年の単行本刊行時、03年の文庫化の際も評判に。しかし関係者や熱烈なファンの間では「素晴らしい作品だから、もっと売れていいはず」という声があった。昨年、映画化決定を告知するオビや、映画のビジュアルの表紙に変更して、ようやく部数が大きく動いた。
主人公は、オックスフォードに住む11歳の少女、ライラ。といっても、そこはこの世界とは異なるパラレルワールドである。連れ去られた友人を救うべく北極へ向かった彼女の冒険は、やがて思わぬ方向へ……。「動物の姿をした守護精霊(ダイモン)、真実を示す羅針盤、未知の物質ダストといった発想の豊かさや、2部以降、さらに異次元の世界が広がっていくスケールの大きさが魅力です」と、担当編集者の中川建さん。
読者は男女問わず、年齢層も幅広い。「大人でも楽しめる」という声が多いのは、作者の深い世界観が垣間見えるからか。ライラも決して善良な“いい子ちゃん”ではなく、意地悪で、嘘(うそ)つきな時も。中川さんも「善悪併せ持った子供が、時に自分の中の悪を利用しながら、信じる方向に進んでいく。人間の姿と成長の過程を正確に描いているな、と感じます」。
夢心地のおとぎ話ではない、骨太な物語。何度繰り返し読んでも、心を揺さぶられる。
99年の単行本刊行時、03年の文庫化の際も評判に。しかし関係者や熱烈なファンの間では「素晴らしい作品だから、もっと売れていいはず」という声があった。昨年、映画化決定を告知するオビや、映画のビジュアルの表紙に変更して、ようやく部数が大きく動いた。
主人公は、オックスフォードに住む11歳の少女、ライラ。といっても、そこはこの世界とは異なるパラレルワールドである。連れ去られた友人を救うべく北極へ向かった彼女の冒険は、やがて思わぬ方向へ……。「動物の姿をした守護精霊(ダイモン)、真実を示す羅針盤、未知の物質ダストといった発想の豊かさや、2部以降、さらに異次元の世界が広がっていくスケールの大きさが魅力です」と、担当編集者の中川建さん。
読者は男女問わず、年齢層も幅広い。「大人でも楽しめる」という声が多いのは、作者の深い世界観が垣間見えるからか。ライラも決して善良な“いい子ちゃん”ではなく、意地悪で、嘘(うそ)つきな時も。中川さんも「善悪併せ持った子供が、時に自分の中の悪を利用しながら、信じる方向に進んでいく。人間の姿と成長の過程を正確に描いているな、と感じます」。
夢心地のおとぎ話ではない、骨太な物語。何度繰り返し読んでも、心を揺さぶられる。
朝日新聞 2008年3月16日
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