書評

『黄金の羅針盤(ライラの冒険)』(新潮社)

  • 2017/10/19
黄金の羅針盤〈上〉 ライラの冒険 / フィリップ プルマン
黄金の羅針盤〈上〉 ライラの冒険
  • 著者:フィリップ プルマン
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:文庫(343ページ)
  • 発売日:2003-10-29
  • ISBN-10:4102024115
  • ISBN-13:978-4102024119
内容紹介:
両親を事故で亡くしたライラは、お転婆な11歳の女の子。そんな彼女のまわりで子供が連れ去られる事件が起きる。どうやら北極で子供たちが何らかの実験に使われているらしい。ライラと彼女の守… もっと読む
両親を事故で亡くしたライラは、お転婆な11歳の女の子。そんな彼女のまわりで子供が連れ去られる事件が起きる。どうやら北極で子供たちが何らかの実験に使われているらしい。ライラと彼女の守護精霊は子供たちを助けるために、船上生活者ジプシャンに同行する。世界に6つしかない黄金の羅針盤を持って北極へと向かったライラだったが…。世界的ベストセラーの冒険ファンタジー。カーネギー賞、ガーディアン賞ほか、数々の賞に輝く。
現在、映画化作品が大ヒット中の、ファンタジー小説の金字塔(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は2008年)。昨年は英国の児童文学賞、カーネギー賞の70年間の歴史におけるベスト1に選ばれた。「ライラの冒険」シリーズの第1部であり、文庫版は3部作全6巻で100万部を突破。小学生向けの軽装版も版を重ねる。

99年の単行本刊行時、03年の文庫化の際も評判に。しかし関係者や熱烈なファンの間では「素晴らしい作品だから、もっと売れていいはず」という声があった。昨年、映画化決定を告知するオビや、映画のビジュアルの表紙に変更して、ようやく部数が大きく動いた。

主人公は、オックスフォードに住む11歳の少女、ライラ。といっても、そこはこの世界とは異なるパラレルワールドである。連れ去られた友人を救うべく北極へ向かった彼女の冒険は、やがて思わぬ方向へ……。「動物の姿をした守護精霊(ダイモン)、真実を示す羅針盤、未知の物質ダストといった発想の豊かさや、2部以降、さらに異次元の世界が広がっていくスケールの大きさが魅力です」と、担当編集者の中川建さん。

読者は男女問わず、年齢層も幅広い。「大人でも楽しめる」という声が多いのは、作者の深い世界観が垣間見えるからか。ライラも決して善良な“いい子ちゃん”ではなく、意地悪で、嘘(うそ)つきな時も。中川さんも「善悪併せ持った子供が、時に自分の中の悪を利用しながら、信じる方向に進んでいく。人間の姿と成長の過程を正確に描いているな、と感じます」。

夢心地のおとぎ話ではない、骨太な物語。何度繰り返し読んでも、心を揺さぶられる。
黄金の羅針盤〈上〉 ライラの冒険 / フィリップ プルマン
黄金の羅針盤〈上〉 ライラの冒険
  • 著者:フィリップ プルマン
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:文庫(343ページ)
  • 発売日:2003-10-29
  • ISBN-10:4102024115
  • ISBN-13:978-4102024119
内容紹介:
両親を事故で亡くしたライラは、お転婆な11歳の女の子。そんな彼女のまわりで子供が連れ去られる事件が起きる。どうやら北極で子供たちが何らかの実験に使われているらしい。ライラと彼女の守… もっと読む
両親を事故で亡くしたライラは、お転婆な11歳の女の子。そんな彼女のまわりで子供が連れ去られる事件が起きる。どうやら北極で子供たちが何らかの実験に使われているらしい。ライラと彼女の守護精霊は子供たちを助けるために、船上生活者ジプシャンに同行する。世界に6つしかない黄金の羅針盤を持って北極へと向かったライラだったが…。世界的ベストセラーの冒険ファンタジー。カーネギー賞、ガーディアン賞ほか、数々の賞に輝く。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2008年3月16日

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