書評
『笑韓でいきましょう』(悟空出版)
嫌韓にも親韓にもタメになる本
韓国の大統領や、中国共産党の主席が、日本の首相がアイサツしている時に、シカトしたり、仏頂面をしていたりするのを見て、うっかりすると腹を立ててしまったりするけれども、こういう時「深沢七郎さんだったらどうするかな?」と私は考えるのだ。深沢さんは、ケネディ大統領が銃撃されて亡くなった時に、赤飯を炊いたと言った人で、私はとてもびっくりしたが、それはケネディ大統領が「政治家だから」なのだと知って「おもしれえなあ」と思ったのだ。
毛沢東が偉人だって噂(うわさ)の頃、私は青林堂の若い社員だったが、社長の長井勝一さんに「毛沢東は偉人か」どうか尋ねたことがあった。答は、「人間だから……」というものだった。偉人というのは偉い人間という意味だと思うけど、長井さんの考えは、人間はたいしたことないので、それで「人間だから……」というのだ。
だから、私は政治家が失礼なことを言ったり、やったりしても、うっかり怒ったりしないようにしている。しかし、うっかりしていると、まるで日本の本人のようなつもりで怒ってしまうので注意が肝心だ。
最近はネトウヨとかいう人たちが韓国人にヘイトスピーチをしたり、韓国や中国の悪口を書くと、週刊誌などが売れるらしく、さかんにそういう記事を書いたり、本にまとめて大いに売ったりするらしい。
私は戦後二年目に生まれたので、コドモの頃に、外国の悪口をしてはいけない。特に戦争で迷惑をかけた国のことは、絶対に悪口しちゃいけないといって育てられた。
だいぶ育って、私はいま六十八歳になろうとしているのだが、世間で、韓国だの中国だのの悪口をどしどしするようになったのを見て、ちょっと今まで、ムリにガマンしすぎだったかもしれないな、と思っているところだ。
急に悪口をするようになると、どんどんエスカレートするみたいなのが、ちょっとカッコわるいな、と居心地がよくない。もっとフツーの気持ちで悪口すればいいのにと思う。
アメリカの悪口とか、ロシアや、イギリスやイタリアやドイツやスイスや、インドとか世界各国の悪口をもっとフツーに言うといいと思う。
高信太郎さんは、ある時急に韓国に興味を持って、韓国語の歌謡曲のレパートリーが三百曲にもなるくらい韓国通になった人だ。
学者と違って、おもしろいので、韓国の本を何冊も書いてベストセラーになったりするくらい、興味を持ったらとことんやりぬく。
知識を吸収するということが、楽しくてしようがない人なのだと思う。とにかく、いろんなことを、本当にたくさんよく知っている。
以前『東京人』という雑誌で、村松友視さんが高さんにインタビューする企画というのに同席したことがある。当時、編集長だった粕谷一希さんが目を丸くして、高さんの博識を讃(たた)えていたのが印象的だった。
この本には、高さんが興味を持った韓国についての知見が、とてもたくさん、目を丸くするほどにつめこまれている。ヘイトスピーチをするネトウヨの人にも、まじめな親韓派の人にも勉強になる本だと私は思いますね。
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