書評

『同調圧力にだまされない変わり者が社会を変える。』(大和書房)

  • 2017/09/14
同調圧力にだまされない変わり者が社会を変える。 / 池田清彦
同調圧力にだまされない変わり者が社会を変える。
  • 著者:池田清彦
  • 出版社:大和書房
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(192ページ)
  • 発売日:2015-06-03
  • ISBN-10:447939267X
  • ISBN-13:978-4479392675
内容紹介:
マジョリティーは本当に安全か?不思議な生物の宿命。自由に生きるためには自分の頭で考える。ちょっとぐらい「変」なほうが生きやすい!

若い人たちに読んでほしい本

人は誰であれ、アホなことをする権利、他人を愛する権利、他人をバカにする権利などを持つが、他人に愛される権利とか、他人に褒めてもらう権利とか、他人に理解してもらう権利などはないのだ。

どうだろう? これは本書のまえがきの文章である。いきなり横に傍線をひっぱっちゃいました。おもしろいなあ、池田さんは。

私は池田さんの本が大好きなんですが、それは、いきなりおもしろいからだ。ケチケチしてないで、まえがきから、速攻でおもしろい。

実は、一ページ目から傍線はひっぱってあるんだけど、もうひとつ、四ページ目に傍線ひいたとこも引用しましょう。

人々の多様性と個性を尊重するためには、相手のことを良く理解しましょうという言辞が、極めて良心的な考えのように流布されることが多いが、これは、理解できなければ、差別してもかまわないという考えと紙一重のところがあって、危ない考えなのだ。

人間の脳みそはそれぞれ異なるのだから、究極的には他人のことを理解できるわけがないのだ。

おもしろいなァ。こうしてると、全文引用しそうになるので、このくらいにしておくけど、とにかくこの調子で本文に突入して、どんどんおもしろいまま読み切ってしまう。

何がおもしろいのかと言って、うかつにあたりまえだと思っていたことが、バリバリひっくりかえされることだ。

だいたいが「あたりまえ」な話というのは、ぜんぜんおもしろくない。おもしろくなくても、あたりまえなんだからしかたないか、と思ってるとこを、バリバリバリッとひっくりかえされる。ものすごくおもしろい。

やっぱり、また引用したくなった。

私が一番嫌いなのは、真面目でバカな人

次に嫌いなのは、ただバカな人

真面目でお利口な人は、嫌いじゃないけど、うっとうしいからあまり付き合いたくない

あはは、いいなァ。こういう放言があちこちで噴出します。そこだけが面白いんじゃもちろんないので、初耳な話や、下世話なことが学問的に解明されたり。

前述したように、常識的な思い込みが、科学的・学問的にひっくりかえされる快感にみちている。

これは私にとっては「お笑い」とほとんど同義であって、「お勉強」する意味の「学習」ではなく「お笑い」のうちに獲得する「学習」なのだ。

私は、笑っている時に、脳の回路は作られている、と考えていて、少なくても私の脳みそはそのようにできていると思う。

お笑いの芸人さんは、無理をしてでも「非常識」になろうとしている。非常識にしていれば、退屈な「あたりまえ」をひっくりかえすキッカケをつかめるからだ。

学者は、学問によって非常識なのだ。ギリギリと考えられた考えは、常識をはずれていく。もちろん、すべての学者が、そのようではないので、そういう学者こそが本物だ。

池田さんは、笑える学者だ。ご本人もたいがいいつも笑ってるけどね。でも、ほんとは、とっても怒ってるし、心配している。若い人たちに私は池田さんの本を読んでほしい。
同調圧力にだまされない変わり者が社会を変える。 / 池田清彦
同調圧力にだまされない変わり者が社会を変える。
  • 著者:池田清彦
  • 出版社:大和書房
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(192ページ)
  • 発売日:2015-06-03
  • ISBN-10:447939267X
  • ISBN-13:978-4479392675
内容紹介:
マジョリティーは本当に安全か?不思議な生物の宿命。自由に生きるためには自分の頭で考える。ちょっとぐらい「変」なほうが生きやすい!

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

初出メディア

サンデー毎日

サンデー毎日 2015年7月19日

  • 週に1度お届けする書評ダイジェスト!
  • 「新しい書評のあり方」を探すALL REVIEWSのファンクラブ
関連記事
南 伸坊の書評/解説/選評
ページトップへ