書評
『婚姻の話』(岩波書店)
【名著 味読・再読】日本における婚姻を考える
恋愛結婚が圧倒的な主流のいま、仲人を介したお見合いというと古臭く聞こえる。しかし、これは明治期に急速に一般化した「近代化」の産物だった。それ以前の日本社会は、村落の中で完結した婚姻がほとんどだった。男女のマッチングと教育を担う娘宿・若者宿、夜這い、嫁盗みなど、ローカルな社会での婚姻を支える慣行が発達していた。しかし、著者の観察と洞察は、こうした現在の価値観からすれば奇異な因習が、当時の社会的・経済的条件の中で練り上げられた「合理的」なシステムであったことを明らかにする。
婚姻は今も昔も一大事。本気になれば知恵と工夫が生まれ、その時代時代で目的にかなった仕組みとして定着する。人間社会の底力を知る。
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