書評
『東京焼盡』(中央公論新社)
【名著 味読・再読】日本人の適応力を知る
「日本の将来は大丈夫か?」と心配する向きに読んでほしい。結論を言えば「大丈夫」。難問が押し寄せるのは間違いない。しかし、今までもその連続だったことを忘れてはいけない。昭和19年から20年、空襲下の東京での日記。空襲警報が鳴る。地響きが聞こえる。「非常にこはかった。家内と二人、運を天にまかして八畳で固くなってゐた」。それでも生活は続く。わずか半年後、人々はもうすっかり慣れている。寝たまま空襲をやり過ごす。一面の焼野原で近所の人と愉快に笑うこともある。
そして終戦。済んだことは仕方ない、出直しやり直し新規まき直し。妙な明るさがある。そこから戦後復興が始まる。
日本と日本人の驚くべき適応力を知る。
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