書評
『皇族―天皇家の近現代史』(中央公論新社)
【名著 味読・再読】密度が濃い皇族の研究書
激動期にあった明治政府は、政治的・社会的な安定と統合のための求心力を皇族に求めた。皇族は、そもそも近代的論理を超越した存在である。だからこそ、近代的制度に組み込まれなければならなかった。本書は、壮大な矛盾・超克の物語を淡々と綴る。明治維新以後も、漸進的な制度変更を絶え間なく繰り返すことによって、天皇と皇族は社会との折り合いをつけてきた。その過程では、天皇自身はもちろん、多くの人々の努力と試行錯誤があった。
歴史を知らなければ未来を語ることはできない。2019年4月に今上天皇は退位し、翌5月には元号が変わることが決まった。天皇の交代が近づくいま、皇室の在り方について考える人にとって必読の書である。