内容紹介
『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』(岩崎書店)
世の中の大事なことを決めるのは、どうしてスーツ姿のおじさんばかりなの?
(書き手:北欧語翻訳者 枇谷 玲子)
見出しの内容は、10才のスウェーデン人の女の子、エッバが新聞にのっていた写真を見て、気づいたことです。エッバはさらにこう考えます。「女の人はえらくなれないの? こんなんだったら、別の夢を持った方がいいのかな?」「世の中の大事なことを決めるのに、男性だけでなく、女性、それに子どもも加われば、よりよい決定がされて、世界はうんと面白くなる」
エッバはクラスメートや近所の女の子や男の子と、フェミ・クラブを結成。日常感じる不平等について話し合います。
またフェミニストのおばあちゃんや、いとこのお姉さんの助けを借り、昔のフェミニスト達がどんな風に闘ってきたのかも学んでいきます。
エッバ達、フェミ・クラブのメンバーは、こんなルールを自ら考え、決めました。「まわりの期待に応えることばかり、考えちゃいけない。他人からどう思われるのかばかり、気にしない。ありのままでいよう。自分の気持ちに正直になろうよ。そして、したい格好をしよう。それにほかの人も、自由にさせてあげるんだ」
日本では現在、海外からのMeToo運動が波及。セクハラや性的暴行、長時間労働による家事と仕事の両立の難しさ、夫婦間の家事・育児の分担の不平等などが盛んに報道、議論されています。
私達大人は残念ながら、エッバ達子どもと違い、他人の痛みを理解し、共感し、皆で団結するのが苦手です。声を上げる人を罵倒する人までいます。この本に書かれているフェミニズム運動の歴史を知ると、ヨーロッパでも男女平等を求め闘ってきたフェミニスト達が、醜い年増の似顔絵を描かれたり、非難されてきたことが分かります。
心ない言葉を浴びせられるのは女性だけではありません。女性達を支持、共感する日本の男性もです。ヨーロッパでも実は男女平等を求めた男性は、男の風上にもおけないと言われたようです。私達は歴史を知ることで、現在起きていることの原因や人の心のメカニズムを知り、対処法を考えることができます。
日本では 「女は家にいるべきだ」「女の仕事は子どもを産み育てることだ」そんなことを言う人が、社会を牽引するリーダーの中にも、いまだにいます。その人達の主張は、理にかなっているのでしょうか? そもそも男らしさ、女らしさって何でしょう?
私達は知らず知らずのうちに、誰かを支配し、抑圧していないでしょうか? この本の中では、ノルウェー人の心理学者で政治家のベリット・オースによる6つの支配の手口も紹介されています。
子どもはもちろん、 大人にも、男女平等について議論する前に知ってほしいフェミニズムの基本が易しい言葉で示された本です。スウェーデンはもちろん、ロシアやトルコなどの国でも、フェミニズムの金字塔的な作品として、男女平等を目指し行動する人達を励まし続けています。日本の皆さんにも、 自信をもってお薦めいたします。
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