自著解説
『ゴーストバスターズ 冒険小説』(講談社)
『ゴーストバスターズ』脱稿
どうもいまちゃんとした文章が書けそうにないので、そこのところはお許し願いたい。つい昨日、九年ぶり(?)の長編小説『ゴーストバスターズ』が脱稿し、極端な虚脱状態に陥ったまま抜け出せないのである。ただもうひたすら眠い。リヴィングでテレビを見ている……と、いつの間にか寝ている。トイレで便器に座っている……と、いつの間にか寝ている。晩飯を食べ……ながら、寝ている。電話で誰かと話しながら……「どうしたの?」といわれ、目が覚める。いかん、いかん、いかん。来たばかりの「ビッグコミックスピリッツ」を読もうと手にとる……と雑誌が手からドスッと落ちる。それから、やたらと腹が減るのである。起きている間はずっと食べっ放しじゃないだろうか。いまも、ドーナツを食べながらこの原稿を書いているところ。もしかしたら、わたしは現在「壊れている」のかもしれない。『ゴーストバスターズ』を最初に依頼されたのは、『さようなら、ギャングたち』でデビューした直後のことだから、いまからざっと十五、六、七年前になる。依頼したAさんは当時、雑誌「群像」の編集者だったが、編集長を経て、現在は局長をなさっている。会う度にいわれた「いくらなんでも、わたしが定年になるまでには完成してくださいよ」の台詞ももう聞かずにすむ。いや、いわずにすむAさんの方がホッとしたかな。
もちろん、ワープロを使った。ワープロでは章ごとの書き始めの日付も記録されている。いちばん古い日付は一九九〇年七月十四日。その年の正月から書き出していたはずだから、半年分の原稿はどうなってしまったのだろう。
『ゴーストバスターズ』を書き始めた時決めていたのは、こんなことだった。
① 世界全部を入れる
② 歴史全部を入れる
③ 愛と友情と哀しみを入れる
④ 読んでひたすら面白い
⑤ なおかつ、今世紀末の日本文学を代表する(!)
⑥ 同時に、今世紀末の世界文学を代表する(!)
⑦ そればかりか、二十一世紀の文学を予言する(!)
笑うなかれ。その結果がどうであったかは、これから読者のみなさんに判断していただきたい。けれど、ぼくの能力は出し尽くしたような気がする。いま、これ以上のものは書けません。
この小説は、アメリカ西部に住むふたりのガンマンが、東部で跳梁跋扈しているという「ゴースト」についての無数の噂話を聞くところからはじまる。いったい「ゴースト」とは何なのか? 「ゴースト」にまつわる事件は多いのに、それを実際に見た者はどこにもいないのだ。かくして、ふたりのガンマンの「ゴースト」探しの旅が開始される……。だが、「ゴースト」を探していたのは彼らだけではなかった。あちらにもひとり、こちらにもひとり。しかし、「ゴースト」の正体を知っている者だけはどこにもいなかったのである。苦難の旅の果てに、彼らはついに「ゴースト」と巡り合う。果たして「ゴースト」の正体とは?
結局のところ、ここ、六、七年ぼくはずっと、誰も書いたことのない、誰も思いつかなかった「ゴースト」を創り出そうと努めていたことになる。書ききれなかったことは多いが、それは作者の能力の問題だから仕方あるまい。とにかく、「ゴースト」たちとの付き合いは終わってしまったのだ。バイバイ、ぼくのゴーストたち。ありがとう。また、いつか会える日が来るのを楽しみに。
【この自著解説が収録されている書籍】
ALL REVIEWSをフォローする








































