書評
『ラーメンを味わいつくす』(光文社)
ラーメンの血中オタク濃度
熱狂的ラーメン好きは、そば好き、丼好きなど、他のB級グルメとは違うニオイを放っている。ニオイといっても、ニンニクくさいとかラードくさいという意味ではない。なんというか、血中オタク濃度が高いのである。なにしろ寒風吹きすさぶなか行列してまで、一杯のラーメンを食べようというのだから。たとえその三軒先にがら空きのラーメン屋があったとしても。佐々木晶の『ラーメンを味わいつくす』はそんなラーメン好きによるラーメンの楽しみ方案内である。著者は惑星科学を研究する大学院助教授であると同時に、「TVチャンピオン」の六代目ラーメン王。
食べた有名ラーメン店の数を競うのもいいが、同じ店に何度も行くリピート派もいいとか、ラーメン屋で飲むときはビールが先かラーメンが先かなんて話題があり、都内ラーメン店の系列や化学調味料の善悪についてもひと考察ある。楽しみつつも、たかがラーメン一杯のために、大のオトナが真剣になっちゃって、という微妙な照れが行間に滲む。これぞB級グルメの真骨頂である。ときどきテレビなどに出てくる、眉間に皺よせて難行苦行するみたいにしてラーメンを作る職人よりも気持ちがいい。
それにしても、よほどラーメンブームがすごいのか、それともレーベル乱立でついテーマが一致してしまうのか、このところラーメンに関する新書が相次いだ。昨年の九月には河田剛『ラーメンの経済学』(角川oneテーマ21)が出ているし、この一月には岡田哲『ラーメンの誕生』(ちくま新書)も出た。
前者はラーメン好きの企業アナリストによるビジネスとしてのラーメン研究であり、後者は日清製粉OBの食文化史研究家によるラーメン史である。学者が専門領域について語るよりも、なんだか熱気を感じてしまうのは、やはり著者たちの血中オタク濃度が高いからなのか。夜中にこれらの本を読んでいると、猛烈にラーメンが食べたくなってきた。
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