書評

『ビール職人、美味いビールを語る』(光文社)

  • 2020/08/20
ビール職人、美味いビールを語る / 山田 一巳,古瀬 和谷
ビール職人、美味いビールを語る
  • 著者:山田 一巳,古瀬 和谷
  • 出版社:光文社
  • 装丁:新書(205ページ)
  • 発売日:2002-05-00
  • ISBN-10:4334031439
  • ISBN-13:978-4334031435
内容紹介:
「五〇年近くビールをつくってきて、いまだにビールというのは難しい酒だと、本当にそう思います」ビール職人・山田一巳はキリンビール在職中、『ハートランド』『一番搾り』など数々の名品を世に送り出してきた。定年退職後、理想のビールづくりを求め、八ヶ岳山麓にある地ビール工房の醸造長に就任した「達人」が語る"美味い"ビール、そして、ものづくりの"原点"と"極意"。

ビールは生き物なんです

ビールがおいしい季節になりました、というのは手紙の書き出しの定番だけれども、ほんとビールがうまい。

うまいビールをもっとうまく飲みたい! というわけで山田一巳・古瀬和谷『ビール職人、美味いビールを語る』を読んだ。山田はキリンビールで「ハートランド」や「一番搾り」などの開発にかかわり、現在は八ケ岳の地ビール醸造長を務める。ノンフィクション・ライターの古瀬が聞き書きしたのが本書だ(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は2002年)。

うまいビールの飲み方紹介というよりも、ビール職人の半生記というべき本なのだが、山田の人生を通して、ビールとは何かが見えてくる。

最初のほうに、「ビールというのは生き物なんです」という山田の言葉が出てくる。大麦を発芽させるのも、モルトのデンプンが酵素の作用で糖化するのも、酵母の力でアルコールと炭酸ガスを発生させる発酵も、すべてが自然の力。職人の仕事は機械の操作ではなく、麦芽や酵母の機嫌をうかがい、彼らをうまく働かせること。

山田は発酵過程で酵母に「もうちょっと(糖分を)食ってくれよ」と囁きかけたという。

できあがったビールも生きている。注ぎかたにもコツがあるし、買ったビールは早く飲んだほうがいい。日向に置きっぱなしなんてもってのほか。運ぶときも飲むときも、生き物だと思って優しく扱え。

相原恭子『もっと知りたい!ドイツビールの愉しみ』(岩波アクティブ新書)は、ビールを切り口にしたドイツ案内。このなかに、なぜ修道院でビールが造られたのかが出てくる。かつてビールは断食の飢えをしのぐ「飲むパン」であり、伝染病から身を守る安全な水だったのだとか。

相原の本に出てくる、ホテルつき醸造所レストランというのがうらやましい。ビール工場にレストランが付属していて、できたてのビールを飲めるし、酔っぱらったらそのまま泊まれるというのだ。これならクルマで行っても大丈夫。だれか日本にも造ってくれ!
ビール職人、美味いビールを語る / 山田 一巳,古瀬 和谷
ビール職人、美味いビールを語る
  • 著者:山田 一巳,古瀬 和谷
  • 出版社:光文社
  • 装丁:新書(205ページ)
  • 発売日:2002-05-00
  • ISBN-10:4334031439
  • ISBN-13:978-4334031435
内容紹介:
「五〇年近くビールをつくってきて、いまだにビールというのは難しい酒だと、本当にそう思います」ビール職人・山田一巳はキリンビール在職中、『ハートランド』『一番搾り』など数々の名品を世に送り出してきた。定年退職後、理想のビールづくりを求め、八ヶ岳山麓にある地ビール工房の醸造長に就任した「達人」が語る"美味い"ビール、そして、ものづくりの"原点"と"極意"。

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初出メディア

週刊朝日

週刊朝日 2002年6月28日

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