書評
『窓辺のこと』(港の人)
季節を刻む文章、心にストン
石田千さんの文章にはどれも季節が刻まれている。記憶の中の出来事でさえ、きちんと季節が顔をのぞかせている。本書は、石田さんが50歳になる1年の間に書いたエッセーをまとめた本だ。20歳の時に昭和から平成になり、50歳で平成が令和になった、とあとがきにある。時代の節目が自分の年齢の区分と重なっていること自体に意味はないが、石田さんが書くと、なぜかストンと納得してしまう。
お父様を亡くされたことが文章の底に流れている。直接的な表現はない。その人の不在が不意に忍び込んでくる瞬間を石田さんは掬(すく)いあげる。うまいなあ、と思う。牧野伊三夫の挿絵も本の世界を見事に演出している。
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