書評

『僕らはソマリアギャングと夢を語る――「テロリストではない未来」をつくる挑戦』(英治出版)

  • 2020/05/25
僕らはソマリアギャングと夢を語る――「テロリストではない未来」をつくる挑戦 / 永井 陽右
僕らはソマリアギャングと夢を語る――「テロリストではない未来」をつくる挑戦
  • 著者:永井 陽右
  • 出版社:英治出版
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(208ページ)
  • 発売日:2016-05-10
  • ISBN-10:4862762220
  • ISBN-13:978-4862762221
内容紹介:
「ソマリアほど劣悪だと、誰も何もできやしないよ」何度そんなことを言われただろう。ある日知ってしまった紛争地の問題を、「何とかしたい」と思い立つ著者。「無理だ」と言われ続けながらも、日本とアフリカで仲間を集め、「自分たちだからできること」を探し続けた。現実と理想のギャップ、答えが見えない無力感、仲間との対立…数々の困難を乗り越えた末に出会ったのは、「テロリスト予備軍」と呼ばれる同年代のギャングだった。各国メディアが注目!「世界最悪の紛争問題」に挑む若者たちの奮闘記。

紛争から再生する試み

二十五年以上にわたって、ひどく不幸な紛争に苛(さいな)まれてきている国がソマリアだが、そこはあまりにも危険であるため世界中の救援組織から事実上見放されている。この本は、少しでも不幸の軽減と平和に貢献できないか、という信じられないほど純粋な正義感を持った大学生が、日本とソマリア双方の若者からなる「ユース団体」を設立して、運営していく様子を当事者の立場から描き出したものだ(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は2016年)。

彼らは数十万人のソマリア人避難民が暮らす隣国ケニアの首都近郊イスリー地区を活動の場として選ぶ。そこでは、長年にわたる避難民生活の中で教育を受けられず、ケニア人から警戒・迫害されて育った多数の若者が、人生の目的を見つけられずにギャング化している。それがソマリア人全体の評価を落とすことになり、次の世代にも受け継がれていき、結果として彼ら自身が武装組織に利用されて紛争を更新していくという悪循環ができあがっている。そこで著者らは同年代の若者であるということを最大の資産として利用して、ギャングの若者たちに接近し、彼ら自身をコミュニティ再生プログラムの主体に転じさせる活動を構築していく。

面白いのは、フェイスブックやスカイプなどの新しいメディアとテクノロジーを当たり前のものとして育った世代ならではの組織運営法で、それによって彼らは距離や時差や文化的な隔たりを軽やかに乗り越えていく。一方で、活動が評価され、外部から活動資金を獲得できたことによって、かえって組織が崩壊の危機に瀕(ひん)するという普遍的な事件もおこる。

世界的な紛争に関しては、個人にはどうしようもないと諦めがちだが、小さなところから始めて積み重ねていけばたしかに少しずつ変えられる、改善できる、という強力なメッセージをこの本は発している。わずか五年でどれほどのことができるのか、自分の五年間を振りかえって、身の引き締まる思いがする一冊だった。
僕らはソマリアギャングと夢を語る――「テロリストではない未来」をつくる挑戦 / 永井 陽右
僕らはソマリアギャングと夢を語る――「テロリストではない未来」をつくる挑戦
  • 著者:永井 陽右
  • 出版社:英治出版
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(208ページ)
  • 発売日:2016-05-10
  • ISBN-10:4862762220
  • ISBN-13:978-4862762221
内容紹介:
「ソマリアほど劣悪だと、誰も何もできやしないよ」何度そんなことを言われただろう。ある日知ってしまった紛争地の問題を、「何とかしたい」と思い立つ著者。「無理だ」と言われ続けながらも、日本とアフリカで仲間を集め、「自分たちだからできること」を探し続けた。現実と理想のギャップ、答えが見えない無力感、仲間との対立…数々の困難を乗り越えた末に出会ったのは、「テロリスト予備軍」と呼ばれる同年代のギャングだった。各国メディアが注目!「世界最悪の紛争問題」に挑む若者たちの奮闘記。

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初出メディア

読売新聞

読売新聞 2016年6月19日

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