書評

『ゼルダ 最後のロマンティシスト』(中央公論新社)

  • 2022/04/02
ゼルダ 最後のロマンティシスト / ジル ルロワ
ゼルダ 最後のロマンティシスト
  • 著者:ジル ルロワ
  • 翻訳:傳田 温
  • 出版社:中央公論新社
  • 装丁:単行本(240ページ)
  • 発売日:2008-11-01
  • ISBN-10:4120039870
  • ISBN-13:978-4120039874
内容紹介:
アラバマ一の美女と謳われた奔放な青春時代。グラマラスなカップルともてはやされた放蕩の日々。小説を書き、絵を描き、バレエに熱中してもなお、夫の支配から逃れることができなかった結婚生… もっと読む
アラバマ一の美女と謳われた奔放な青春時代。グラマラスなカップルともてはやされた放蕩の日々。小説を書き、絵を描き、バレエに熱中してもなお、夫の支配から逃れることができなかった結婚生活。フランス人飛行士との恋、飲酒に溺れていく夫との衝突、避けがたく見舞う精神の崩壊-没後60年、当時の風俗や実在の人物をちりばめて、嫉妬、焦燥、自己破壊の衝動に苛まれながら、断崖の山道を猛スピードで駆け抜けるがごとく生きた、激しく濃密な48年を独創的に描く。フランスで27万部突破のベストセラー小説。2007年ゴンクール賞受賞作。

振幅大きな人生、心のひだを追い求め

ゼルダ(・セイヤー)と言って、どれほどの人が知っているのだろうか。現在のアメリカで、あるいはフランスではどうなのか。

20世紀の前半、アラバマ州の最高裁判事の娘ゼルダは、美女で、才媛で、典雅に生きるはずだったのに、その性は反抗的。文才にもたのむところがあったのだろう。すてきな陸軍少尉と出会い、人目を引くカップルとなり、やがて結婚……。

この少尉が“失われた世代”を代表する作家フィッツジェラルドであったから容易じゃない。若くして才能を注目された作家は、ゼルダとともに放恣な生活を続け、それが作品に反映され、ゴシップの種とされた。

本書は、そのゼルダの半生を綴った作品。一見ゼルダ自身が節目節目の生活と心情を告白しているように読めるが、筆者はフランス人作家のジル・ルロワ。伝記ではなく、脚色された部分もあって、フィクションなのである。この筆致は、様式は、

――こういう小説もあるんだ――

技法としておもしろい。

フィッツジェラルドとゼルダがよいカップルであったのは、出会いのころの短い期間だけ。あとは競いあい、疵(きず)つけあい、おたがいに愛人を作ったりして尋常ではない。ゼルダは彼女自身が夫に負けない才能を持っていると自負していたし、夫が成功したのは“私あってのこと”と信じていた。それゆえに“私は大切な妻なのだ”と。

正直なところ、そばにいたならば、妻であったならば、

――厄介な女だなあ――

後半生はほとんど精神病院に入ったり出たりの連続であった。

古風な上流階級の娘が放埒な作家を求めて、みずからも破滅的な人生へ。才能が豊かであったぶんだけ振幅が大きい。その心のひだを追い求める文学、と評すればよいのだろうか。文学の魔性を垣間見させてくれる。2007年のゴンクール賞受賞作品であり、

――このごろのフランス文学、いかがだろう――

読み応えはある。
ゼルダ 最後のロマンティシスト / ジル ルロワ
ゼルダ 最後のロマンティシスト
  • 著者:ジル ルロワ
  • 翻訳:傳田 温
  • 出版社:中央公論新社
  • 装丁:単行本(240ページ)
  • 発売日:2008-11-01
  • ISBN-10:4120039870
  • ISBN-13:978-4120039874
内容紹介:
アラバマ一の美女と謳われた奔放な青春時代。グラマラスなカップルともてはやされた放蕩の日々。小説を書き、絵を描き、バレエに熱中してもなお、夫の支配から逃れることができなかった結婚生… もっと読む
アラバマ一の美女と謳われた奔放な青春時代。グラマラスなカップルともてはやされた放蕩の日々。小説を書き、絵を描き、バレエに熱中してもなお、夫の支配から逃れることができなかった結婚生活。フランス人飛行士との恋、飲酒に溺れていく夫との衝突、避けがたく見舞う精神の崩壊-没後60年、当時の風俗や実在の人物をちりばめて、嫉妬、焦燥、自己破壊の衝動に苛まれながら、断崖の山道を猛スピードで駆け抜けるがごとく生きた、激しく濃密な48年を独創的に描く。フランスで27万部突破のベストセラー小説。2007年ゴンクール賞受賞作。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2009年01月04日

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