書評
『ルバイヤート集成』(国書刊行会)
十一世紀ペルシアの天文学者にして哲人、オマル・カイヤーム。彼のルバイヤート(四行詩集)が世界的名声を獲得したのは十九世紀後半のことだ。英国人フィッツジェラルドの名訳がその名を不朽にした。
現世の無常を嘆じ、だが来世の救いを疑い、しかしてこの世でひたすら美酒にひと時の悦(よろこ)びを見出(いだ)す。この思想は日本人の人生観によく合致して、全訳に限っても二十種近くにおよぶ。
本書は、一九八八年に九十五歳で物故した英文学者・矢野峰人がフィッツジェラルド訳から重訳した三種類の版を集成したもの。同じ詩を三度訳し直し、そのたびにまったく異なった調子の翻訳に仕上げる驚嘆すべき離れわざなのだ。
稀覯(きこう)本に属する三冊の矢野訳を一つに集めるという発想がなんともうれしく、装丁・体裁に細かい配慮が行き届いて、読み巧者二人による解説も申し分ない。手にしているだけで心おどる昨今稀(まれ)な書痴、文学マニアのための逸品である。
現世の無常を嘆じ、だが来世の救いを疑い、しかしてこの世でひたすら美酒にひと時の悦(よろこ)びを見出(いだ)す。この思想は日本人の人生観によく合致して、全訳に限っても二十種近くにおよぶ。
本書は、一九八八年に九十五歳で物故した英文学者・矢野峰人がフィッツジェラルド訳から重訳した三種類の版を集成したもの。同じ詩を三度訳し直し、そのたびにまったく異なった調子の翻訳に仕上げる驚嘆すべき離れわざなのだ。
稀覯(きこう)本に属する三冊の矢野訳を一つに集めるという発想がなんともうれしく、装丁・体裁に細かい配慮が行き届いて、読み巧者二人による解説も申し分ない。手にしているだけで心おどる昨今稀(まれ)な書痴、文学マニアのための逸品である。
朝日新聞 2005年3月20日
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